【10月7日 AFP】2009年のノーベル物理学賞(Nobel Physics Prize)は6日、情報技術革命をもたらした光ファイバーおよび光センシング技術を開発した3氏が受賞した。

 受賞したのは、香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)の元学長チャールズ・カオ(Charles Kao)氏(75)、米ベル研究所(Bell Laboratories)の元研究員ウィラード・ボイル(Willard Boyle)氏(85)、同ジョージ・スミス(George Smith)氏(79)。

 カオ氏は、「光通信のためにファイバー内に光を伝送する研究」において「画期的な業績を挙げた」功績が評価された。ボイル氏とスミス氏は、「画像処理用の半導体回路であるCCD(電荷結合素子)センサーを開発した」功績が評価された。
 
 ノーベル賞選考委員会は、銅線による電話や郵便からインターネット・Eメール・インスタントメッセージの時代に変革するきっかけを作った3氏を「マスター・オブ・ライト(光のマイスター)」と呼んで称賛した。

■光ファイバーの理論

 カオ氏は、米・英の国籍を持っているが、香港を活動の拠点としてきた。1966年に光ファイバーの理論を構築。「今や、テキストも音楽も画像も動画も、瞬時に世界中に送ることができるようになっている」(ノーベル賞選考委員会)

 同委員会は、「世界中の光ファイバーを1本にまとめた場合、その長さは10億キロ以上と、地球を2万5000回以上回る計算になる。現在でも、1時間あたり数千キロずつ延びている」と説明している。

■CCDセンサー

 ボイル氏(カナダ・米国籍)とスミス氏(米国籍)は、アインシュタイン(Albert Einstein)の「光電効果の理論」(1921年ノーベル物理学賞)を基に1969年、光を電気信号に変えるCCDを開発した。

「光を従来のようにフィルム上にとらえるのではなく、電子的にとらえる点で写真に革命を起こした(ノーベル賞選考委員会)」CCD技術は、デジタルカメラのほか、衛星のカメラ、診断や微小手術のための医療用器具などに応用されている。

 ボイル氏にとって、「光のマイスター」という称賛は特別な意味を持つ。カナダに住んでいた頃、まだ幼かったボイル氏は、毎晩、家族が飼っていた犬ぞり用の犬に食事を与えるために外に出なければならず、暗闇に恐怖を覚えていたという。(c)AFP/Pia Ohlin