【10月5日 AFP】今年のノーベル賞の発表は5日から始まる。受賞の知らせはいつも突然、大きな驚きとしてやってくる。

 1998年に生理学・医学賞を受賞した米国のルイス・イグナロ(Louis Ignarro)氏は受賞を知らされた瞬間を振り返り、「からかわれているのかと思った」とノーベル賞のウェブサイトに語っている。

 フランス・ニース(Nice)の空港で、空港職員が「米国の同僚からの電話」を取り次いだ。電話に出ると同僚は「調子はどうだ?天気はどうだ?」などたわいのないことを尋ねてきた。イグナロ氏はいつもその同僚にからかわれていたため、「順調だが、急いで搭乗しないといけないから、ナポリ(Naples)に着いてからかけ直してもいいか?」と言うと、「構わないが、その前に伝えることがある。きみはノーベル賞を受賞した」と告げたという。直後に電話は突然切れ、イグナロ氏は不安な気持ちのまま搭乗。イタリアに着いてからようやく、別の同僚によって知らせが真実だったことを確認した。

 受賞者のほとんどは、ノーベル委員会のあるスウェーデン・ストックホルム(Stockholm)またはノルウェー・オスロ(Oslo)から受賞を知らせる電話を公式発表の数分前に受け取る。受賞者が地球の裏側にいれば、真夜中に電話が鳴ることになり、これがしばしば受賞者に恐怖を与えている。

 1998年に経済賞を受賞したインドのアマルティア・セン(Amartya Sen)氏もその一人だ。「何か恐ろしい悲劇が起こったに違いない」と身の縮む思いをしたと、うれしいニュースを知らせた電話が鳴ったときのことを振り返る。

 情報漏洩を防ぐためノーベル委員会は受賞者にできるだけ直前に知らせるようにしている。しかし2004年、ケニアのワンガリ・マータイ(Wangari Maathai)氏は公式発表の15分前にAFPの記者に対し、平和賞の受賞が決まったことを明かしている。

 受賞者を探すのは通常、骨の折れる作業だが、2005年に生理学・医学賞を共同受賞したオーストラリアのロビン・ウォレン(Robin Warren)氏とバリー・マーシャル(Barry Marshall)氏の場合はそうでもなかった。ノーベル委員会のハンス・ジョーンバル(Hans Joernvall)氏は共同受賞の場合にいつもするように、まず年長の受賞者であるウォレン氏に電話した。同氏に受賞を告げた途端、「バリーと話しますか?」と聞かれたのだという。2人は毎年生理学・医学賞の発表の際には「受賞できなかったことを互いに慰め合う」ため決まったパブで飲むことにしており、ちょうどその時に受賞を知らせる電話があったのだという。(c)AFP/Marc Preel