【10月5日 AFP】ぬかるんだ川底で死んでから4万年、そのマンモスの子どもは、母親の乳の痕跡が確認できるほど完全な形で、露シベリア(Siberia)地方の永久凍土に眠っていた。

 トナカイを飼う遊牧民たちによって3年前に発見された、このメスの子マンモス「リューバ(Lyuba)」が、米シカゴ(Chicago)にある世界的に有名なフィールド自然史博物館(Field Museum)で行われるマンモス・マストドン展の「スター」としてよみがえる。期間は2010年3月5日から9月6日まで。

 同展のキュレーターを務めるミシガン大学(University of Michigan)のダニエル・フィッシャー(Daniel Fisher)教授(地質学)は、「リューバのような標本をみると、心の底から畏敬の念にとらわれる。展覧会全体では、こうした動物たちが生きていた様子がこんなに詳しく分かるようになった、ということをみてもらえます」と語る。

 科学者たちは、死亡時に生後約1か月だったとみられているリューバから、マンモスの化石やリューバほど保存状態がよくない遺がいからは分からなかった多くのことを学んだ。

 フィッシャー教授によるとリューバの標本から、マンモスの子どもが背部から首にかけて褐色脂肪細胞の「コブ」をもつことが分かったという。この「コブ」によって子マンモスは寒冷気候の中でも体温維持ができていたとみられている。マンモスの誕生期は初春だったという仮説を支持する発見だ。

 リューバは死亡時、健康上にはなんの問題もなかった一方、口や鼻や喉から泥や堆積物が発見されたことから、ぬかるみにはまってもがくうちに、おぼれ死んだものと考えられている。

 また、遺がいの保存状態の程度はDNA採取には十分だが、現時点では誰もマンモスのクローンに乗り出すという一線を越えようとはしていないと、フィッシャー教授は言う。

 この展覧会はシカゴの後、世界10都市を巡回する。巡回展の最後は2014年に英ロンドンの自然史博物館で行われる予定。(c)AFP