■ヒトラーのベルリン脱出説も再燃か

歴史番組専門チャンネル「ヒストリー・チャンネル(History Channel)」は「ヒトラーの逃亡」と題した番組でこの発見を取り上げ、ヒトラーは実はベルリンを脱出していたという説を蒸し返した。

けれどもホロコーストに詳しい、米ノースカロライナ大学(University of North Carolina)歴史学者クリストファー・ブラウニング(Christopher Browning)氏は、この頭蓋骨が別人のものだったとしても、ヒトラーは塹壕のなかで死んだという見解を揺るがすものではないという。

ブラウニング氏によると、歴史家たちが根拠としているのはソビエト軍の報告だけではない。当時の調査は複数あり、なかにはヒトラーと愛人エバ・ブラウン(Eva Braun)の遺体を目撃した人物の証言を集めた英軍情報将校によるものもあり、いずれもロシアが回収した遺体を根拠としていないという。ブラウニング氏は「ヒストリー・チャンネルが、1945年以降に分かったことすべてに疑問があるといっても、それは間違いだ」と指摘する。

ソ連軍はヒトラーとエバ、あるいは宣伝相だったヨーゼフ・ゲッベルス(Joseph Goebbels)と家族と思われる遺体を掘り出した後、数回移動したとされ、「記録の完全性という観点からは(頭蓋骨)まったく信用できない」(ブラウニング氏)。頭蓋骨について疑問を示すロシアの関係筋や科学者もいる。ストラスボー教授も、ソ連軍が集めた骨などの遺がいは、記録や保存の手続きや方法が適切でないと指摘する。

塹壕で死んだほかの家族のDNAサンプルが入手できれば、さらに手がかりは得られるかもしれないが、今のところ「頭蓋骨の本当の主は謎だ」(ストラスボー教授)。(c)AFP/Jane Mills