【9月23日 AFP】インフルエンザによる死亡例のかなりの部分を心疾患がある患者が占めている可能性がある――。こうした研究結果が22日、医学雑誌「ランセット(Lancet)」の感染症専門ジャーナル「The Lancet Infectious Diseases」で発表された。

 研究の対象となったのは、1932~2008年のインフルエンザ流行期の急性心筋梗塞と心臓血管疾患の死亡率。新型インフルエンザA型(H1N1)は含まれていない。

 その結果、インフルエンザ流行期に増加した死亡数のうち35~50%は心臓血管疾患が原因だった可能性が高いという。

 英ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ(University College London)の感染症学者、シャーロット・ウォレンガシュ(Charlotte Warren-Gash)氏とアンドリュー・ヘイワード(Andrew Hayward)氏が中心となった研究チームは、インフルエンザウイルスが炎症を引き起こし、血液凝固因子に作用したのだと指摘する。

 この作用によって動脈壁の内側を覆う脂肪性沈着物が不安定化し、血栓ができて冠状動脈を塞いだのだという。

 インフルエンザワクチンの接種が心疾患患者を守るうえで効果があるかどうか調べた研究はまだ少ないが、今回の研究結果は効果があることを示唆しているという。

 現在、多くの国で、慢性疾患患者に対する季節性インフルエンザの予防接種が推奨されている。この慢性疾患の中には通常、心臓血管疾患も含まれているが、高血圧などのそのほかの心疾患は含まれていないことが多い。

 慢性疾患がある患者が予防接種を受けることは比較的少ない。論文で引用された統計では、英国では、慢性疾患患者のうち季節性インフルの予防接種を受けているのは47.2%にすぎないという。(c)AFP