【9月11日 AFP】北極圏の激しい気候変動が原因で、シロクマの子どもやホッキョクギツネ、トナカイなどが犠牲になっている――。10日の米科学誌「サイエンス(Science)」に、米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)の生物学者、エリック・ポスト(Eric Post)准教授らによるこのような論文が発表された。

 この論文は、北極圏の温暖化が生態系に与える影響について、近年発表されたさまざまな研究結果を概説したもの。

 それによると、北極圏の海氷面積は過去20~30年で年4万5000平方キロのペースで縮小し、このためカモメやセイウチ、アザラシ、イッカククジラ、ホッキョクグマの数が急減した。

 また、積雪量が減少しているため、早春に降る雨が雪の下に作られた巣を破壊してしまい、絶滅の危険が指摘されているシロクマとワモンアザラシの子どもが死んでしまうという悲劇を生んでいる。

 ホッキョクギツネの生息数も減少しつつあるが、これはアカギツネが北上するようになったためだ。

 トナカイの子どもも成育できず死んでしまう例が増えている。母トナカイが出産期を植物の生長に応じて調節することができなくなったせいで、食物が不足してしまうのだ。さらに、夏の温暖化は、移住性動物に害を及ぼす虫や寄生虫の大量発生を招いている。

 蛾(が)の北上は、北極地帯のカバの森や低木、潅木を枯らし、微量ガスの循環に影響を及ぼしている。この現象は、北極圏の二酸化炭素(CO2)貯蔵能力を大きく損う可能性がある。グリーンランドの土壌が秋に凍結を始める時、地中のメタンガスが大量放出されるとの研究もあるという。

 さらに、温暖化によって潅木や樹の生息分布が拡大し、原生植物を破壊しつつあるとの指摘もされている。

 ポスト准教授は、「比較的小規模な動植物の分布状況の変化が、伝統的な文化や観光に重要な独特の生態系を根本から変えてしまう可能性がある」と警告している。(c)AFP