【9月8日 AFP】米証券大手リーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)の経営破たんに発し、国際金融システムが崩壊の瀬戸際に立ってから約1年。第2次世界大戦後最悪の危機は、おぼつかない回復を見せているようだ。金融危機の原因については、いまだ激しい議論があるが、米当局の素早く思い切った対応が、1930年代に起きた世界大恐慌(Great Depression)の再来を回避させたとみる専門家は多い。

 この危機で最も重要な役を担ったのが先日、2期目の米連邦準備制度理事会(Federal Reserve BoardFRB)議長に任命された、世界大恐慌研究の第一人者、ベン・バーナンキ(Ben Bernanke)氏(55)だっただろう。

 ムーディーズ・エコノミー・ドット・コム(Moody's Economy.com)のエコノミスト、ジョセフ・ブルスエラス(Joseph Brusuelas)氏は「バーナンキ氏のリーダーシップの下でのFEDの対応は、過去にみたことがない異例のものだった。ゼロ金利政策で金融システムの流動性を満たした。これが徐々に金融制度の信用を回復し」、信用市場の凍結を防ぐ一助となって、経済活動の復活の弾みとなったと分析する。

 米コロンビア大学(Columbia University)の経済学者ジェフリー・サックス(Jeffrey Sachs)氏も、FEDや各国中央銀行の緊急対応が功を奏したと言い、資産運用会社メシロー・ファイナンシャル(Mesirow Financial)のチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク(Diane Swonk)氏は、危機の頂点でのFEDとバーナンキ氏の対応は驚くほど適切だったと称賛する。「(バーナンキ氏の)対応は素早かったし、創造的だった。リーマンに始まり後は転落しかない、となったときに問題だったのは、落ちるならばどこまでかということだった」

■金融危機の引き金にも責任ありとの批判

 しかし2002~05年には、アラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)前議長の下でFRB理事を務め、06年にFRB議長に就任、今回の危機をもたらしたほころびが見え始めていた同年前半からFRBのかじ取りを担っていたバーナンキ氏は、危機自体の責任の一端も逃れることはできない。

 カーネギーメロン大(Carnegie Mellon University)の経済学者アラン・メルツァー(Allan Meltzer)氏は、「なんの前触れもなくリーマンに破たんを許したのは、FRB史上に残る大失態のひとつだ」と米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿で、歴史的な過ちだと批判した。

 米資産運用会社ユーロ・パシフィック・キャピタル(Euro Pacific Capital)のシニア・マーケット・ストラテジスト、ジョン・ブラウン(John Browne)氏は、危機発生前、バーナンキ議長は「一貫して危険のサインを軽視していた」と指摘する。

 最大の問題は彼がヘリコプターから金をばらまくような経済刺激策を取りかねないことから『ヘリコプター・ベン』と呼ばれたほど、グリーンスパンの『超金融緩和策』の強力な支持者だったことだ。これとFRBのリスク回避政策が相まって生まれ、成長したのが金融カジノ型の巨大銀行だが、それが『つぶすにはあまりに大きく』なりすぎてしまった」

 しかし危機発生から1年経過した今、景気低迷は当初恐れられたほどの深い爪跡は残さずに収拾がつきそうにみえる。

 TDバンク・ファイナンシャル・グループ(TD Bank Financial Group)のエコノミストたちは、2007年12月から2009年6月までの米国の景気循環の山と谷の落差は、実質GDPマイナス3.9%で、これで「大恐慌」ならぬ「大不況」の終わりが告げられると予測している。(c)AFP/Rob Lever