【9月2日 AFP】英国王立協会(Royal Society)は1日、人為的な地球温暖化から地球を守る「地球工学」的な手法を紹介した報告書を発表した。

 全81ページの報告書の中で、同協会は、こうした手法は実験などで立証されておらず、さまざまな問題もあり温室効果ガスを削減する代替策にはなりえないとした上で、いくつかの手法については「有用である可能性」を認めている。

 以下に、一部の手法を紹介しよう。

-- 二酸化炭素(CO2)除去プロジェクト --

「木を植える」
 植林により、光合成を通じてCO2が木々に吸収される。
長所:安全、簡単、早期かつ安価に実施可能、生物多様性に良い影響。
短所:除去されるCO2の量は限定的、土地の使用に関して対立が生じる可能性あり(CO2を減らすために森にするのか、食糧を自給するために畑にするのかなど)

「バイオエネルギー」
 エネルギー源に木や植物を使用する。例としては、バイオマスや木炭。
長所:手頃で安全。
短所:温暖化への即効性がない、土地の使用に関して対立が生じる可能性あり。

「風化作用の促進」
 CO2は、数千年にもわたる炭酸塩やケイ酸塩の土壌の風化(分解)により、大気から除去される。特定の土壌にケイ酸塩を付加することにより、こうした自然作用を加速化させる。
長所:土壌にCO2を貯蔵できる点で有望。
短所:高価、即効性がない、土壌の酸性度や植生に与える影響は不明。

「CO2除去装置」
 大気中のCO2分子を取り込む技術を備えた塔を、世界各地に建設。
長所:安全、技術的に可能、CO2の除去効果は高い。
短所:おそらく極めて高価、塔が集めたCO2を貯蔵するための施設が必要。

「海の肥沃化」
 海に鉄分をまき、光合成によりCO2を吸収する植物プランクトンの成長を促す。植物プランクトンは死ぬと海底に沈むため、CO2を効率的・永久的に封じ込めることが可能。
長所:技術的に可能、それほど高価ではない。
短所:複雑な海流により効果が損なわれる可能性、即効性がない、海の生態系を破壊する可能性が極めて高い。

「海の攪拌(かくはん)」
 海中に巨大なパイプを垂直に立て、海底の海水を海面に、海面の海水を海底にポンプで送り込む。
長所:海におけるCO2貯蔵効率を大幅アップ。
短所:非現実的、大気中のCO2の削減量はごくわずか、環境への影響は不明。


-- 太陽放射の管理 --

 太陽熱を減らすことで地球を冷却できるとする考え。ただし、冷却してもCO2を減らさないことにはさまざまな環境問題が生じてしまうため、上記のCO2除去手段よりも優先度は低い。

「アルベド(太陽光の反射)」
 砂漠地帯を反射素材のフィルムで覆う。または、人工霧発生器を使って海の上空に雲を生成する。
長所:即時に実現可能、即効性が高い
短所:砂漠のアルベドは、砂漠の生態系に多大な影響を及ぼす可能性。海のアルベドは、天候パターンや海流に影響を及ぼす可能性。いずれも非常に高価。

「成層圏にエアロゾル」
 硫酸の白い細かな粒子を成層圏にまき、太陽光を反射する。
長所:技術的に可能、効率が高い(1年以内の気温低下が可能)、即時の実現は可能、安価。
短所:オゾン層に影響を及ぼす可能性、降雨パターンを局地的に乱す可能性。

「宇宙に日よけ」
 反射器を軌道に乗せ、地球上の太陽熱を1-2%減らす。
長所:非常に効果的、冷却効果に理論的限界がない。
短所:実現には数十年かかる、極めて高価、地域的な気候に影響を及ぼす可能性、太陽光の減少が生態系に及ぼす影響が不明。

(c)AFP