【8月17日 AFP】不思議なことにみえるかもしれないが、フランスではハチは、田園地帯よりもパリ(Paris)の都会のジャングルで、気持ちよさげに飛んでいる。それも、ちょっと飛んでいくだけであらゆる種類の花が咲いているし、殺虫剤で死ぬ危険もほとんどない。

 パリのハチのなかには、鉄筋とガラスでできた丸屋根があるセーヌ川(Seine)河畔の展示ホール「グラン・パレ(Grand Palais)」など、歴史的価値のある建物の屋上に置かれた巣箱に住むハチたちもいる。

 グラン・パレのセバスチャン・ド・ガスケ(Sebastien de Gasquet)館長は「街のミツバチたちは幸せだ。必要なものはすべてある。グラン・パレの花だんはもちろん、すぐそばにあるチュイルリー(Tuileries)庭園で花粉や花みつを集めるのはわけがない」と語る。

 グラン・パレの巨大なガラス製ドームの端に、2つの巣箱が設置されたのは前年5月。エッフェル塔(Eiffel Tower)とノートルダム大聖堂(Notre-Dame Cathedral)を見下ろせる位置だ。さらに巣箱を3、4個追加し、年間0.5トンのハチミツ生産を目指す。

 グラン・パレの養蜂計画を行う養蜂業者のニコラ・ジュアン(Nicolas Geant)さんによれば、最近では都会のハチは、地方のハチの4、5倍のハチミツを生産するという。

 農業地帯ではハチの巣箱1つ当たり年間10-20キロのハチミツ生産量なのに対し、都会では80-100キロの生産量があるという。

 パリでは、オペラ劇場「オペラ・ガルニエ(Garnier Opera)」でも数年前から巣箱が設置されているが、グラン・パレに巣箱を置くというジュアンさんの発想は、そんな都会と地方の逆転を示すのが狙いだ。

 農場が近くにある田舎では、垣根や樹木、花が減り続けているが、都会には公園やベランダに無数の小さな花があるうえ、通りや庭園には花のみつがとれるアカシアやライム、クリといったさまざまな木も植えられている。

 ジュアンさんは、パリは自動車の排ガスで特に汚染されているが、大量のハチを殺す殺虫剤や殺菌剤、肥料などがある農業地帯のほうがひどいという。

 フランスの養蜂業組合「Union of ApiaristsUNAF)」は、トウモロコシやヒマワリ、ナタネ畑付近でのハチの死亡率が高いと警告する。欧州全土でのハチの死亡率は1980年代以降、殺虫剤の使用などさまざまな要因により、平均よりも30-35パーセント高くなっている。

 しゃれたパリ7区の建物に設置された8つの巣箱を担当する養蜂業のジャン・ラキューブ(Jean Lacube)さんは「パリには、ほとんど殺虫剤がない」と強調する。また、都会の気温がより温暖なこと、前年仏南西部のハチに大打撃を与えたオオスズメバチの攻撃からも安全なことでも、都会のハチは繁栄しているという。

 ラキューブさんによると、パリには巣箱が300個ほど設置されているが、「都会の養蜂業はぜいたく。養蜂は田舎ですべきで、将来的に都会でやるものではない」と語った。(c)AFP/Emmanuel Angleys