【8月2日 AFP】香港(Hong Kong)在住の美容師イボンヌ・コンさん(40)は4度目のヨガのレッスンのその日、座ったまま体をひねり、背骨を伸ばすポーズに挑戦していた。ほかの生徒ほど体を曲げることができなかったコンさんがポーズを取れるよう、インストラクターが背中を押した。腰に激痛を感じたのはそのときだった。

 痛みはクラスが終わってもひかず、コンさんは翌日、カイロプラクティック院を訪れて治療を始める羽目になった。コンさんはそれまで、ヨガのインストラクターに教える資格があるかどうかを確認したことはなかったという。「だって、資格がなければ教えてるわけがないと思うでしょう」

 アジアの多くの都市同様、香港でもここ数年ずっとヨガがブームだ。しかし、一部の生徒や開業医らによると、流行にともない、けが人も増えている。

 ヨガは、プレッシャーの大きい仕事に就き、都市生活のストレス解消を求める多くの香港人が好むトレーニング方法になり、ヨガを教えるスタジオはますます増えている。

 例えば、香港最大のヨガ教室チェーン「ピュア・ヨガ(Pure Yoga)」は2002年に4000平方メートルのスタジオを開設。現在、チェーン最大のスタジオは3万5000平方メートルあり、台湾の台北(Taipei)や米ニューヨーク(New York)市にもグローバル展開している。

 スポーツ障害を専門的に治療する理学療法士のエルトン・インさんによると、「香港の多忙なライフスタイルでは、1日1~2時間のエクササイズしかできない。ヨガはほかのものよりきつく見えないのでみんなが選ぶ」のだが、ブームになって以来、ヨガで体を痛めた患者がひきも切らない。最も多い訴えは腰痛と首の痛みだという。

 香港の繁華街、銅羅湾(コーズウェイベイ、Causeway Bay)で開業するカイロプラクターのエレノア・キーさんは最近みる患者の20%はヨガでけがをした人たちだという。「みんながけがをしてしまう理由のひとつは、ヨガが単なるリラックス・テクニック以上のものだということを認識していないから。ヨガをマスターするためには何年もの訓練が必要」と指摘する。

 また、インストラクターが生徒に無理やりポーズを取らせたことで、体を痛めた患者にもよく遭うという。

 同じくカイロプラクターのハイディ・ぺトリックさんは、インストラクターが適切な資格をもっているかどうかをチェックすることが肝要だと忠告する。フィットネス・センターのほうは、単にブームに乗じてヨガ教室を開設したがるという。ぺトリックさんは「自分の体を誰かの手に預けるときに、信用しすぎるという大変危険な傾向がある」と懸念する。

 ヨガ教室の生徒がけがを理由に、スタジオを相手取って起こした訴訟もすでにいくつかある。

 インストラクター養成に特化した世界的に認定されているヨガ・センター、「アナハタ・ヨガ(Anahata Yoga)」のディレクター、ヨガナンス・アンディアッパン(Yogananth Andiappan)さんは、負傷の原因はインストラクターの訓練不足だと指摘する。「インストラクターの知識が浅かったり、経験が足りないとけがが起きる」。アナハタ・ヨガで訓練を受けるインストラクターは、200時間の実技実習と、実技・筆記試験に合格しないと資格を取得することができないという。(c)AFP/Francesca Ayala