【8月1日 AFP】(写真追加)上海(Shanghai)在住の看護師ルー・ミン(Lu Ming)さん(31)は2人目の子どもをほしいと思っているが、彼女を踏みとどまらせているのは、同国が長年実施してきた「一人っ子政策」ではないという。

 国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)は7月24日、上海当局は、夫妻双方が一人っ子の場合、2人目を出産するよう勧めていると報じた。

 報道当初、30年にわたり実施されてきた一人っ子政策が緩和されるかに見えたが、国営新華社通信(Xinhua)は数日後、同市の謝玲麗(Xie Lingli)人口計画生育委員会主任の話として、既存の規則について述べただけで、国策とかい離した措置を追求することは決してないと報じた。

 しかし、ルーさんにとって、目下の懸念は資金だ。

「2人目を産みたいけど、どの家族も2人目を養えるほど豊かなわけではない。2人目を育てるには、あらゆる費用を検討しなければいけない。でなければ無責任でしょう」とルーさんは語る。

■人口減少は不可避

 アナリストらは、最近の報道は、労働力減少と高齢化を警告する人口統計学者と、同国の人口が多すぎるとの考えに固執する政府当局者のせめぎ合いを反映していると指摘する。

 米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California Irvine)のワン・フェン(Wang Feng)教授(社会学)は「緊急措置として採用され、1世代だけに適用するはずだった一人っ子政策をどうするか、中国は大きな問題に直面している」と語る。

 たとえ中国が一人っ子政策の廃止を決定したとしても、人口が増加に転じるために必要な出生率2.1を15年以上も下回っている同国にとって、人口減少は不可避だとワン教授は指摘する。

 さらに、若いキャリア思考の女性と生活費の上昇が、中国の人口動態に影響を与えていることを政府はまだ理解していないと指摘する。

■2人目出産を踏みとどまらせているのは経済的な問題

 上海市が2005年から配布している小冊子には、夫婦のいずれかが障害者であること、5年以上漁船で働いていること、農村部出身の一人っ子であることなど、2人目の子どもを持つための条件が列挙されている。

 条件を満たさない夫婦が2人目の子どもを持つと、同市の1人当たりの収入の3倍に相当する罰金が科せられる。2008年の罰金額は8万元(約110万円)で、豊かな家族であれば払える額だ。

 上海市の公園で生後6か月の孫を連れた51歳の女性は、若い世代にとって2人以上の子どもを持つための最大の障壁は経済的問題だと語る。豊かな人生を送るためには学歴が必要で、そのためには費用がかかる。

「わたしの若い頃はお金持ちはいなかったし、物価も安かった。だから2人以上の子どもを持つのも大してお金もかからなかった。いまの若い世代が背負っている経済的な負担はなかったのよ」(c)AFP/D'Arcy Doran