【7月26日 AFP】慢性的な腰痛から神経障害、関節炎まで、人間と同じような症状に悩む多くのペットたちに代替医療として「はり治療」を施している獣医クリニックが、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)郊外にある。「ホメオパシーや中国漢方、はりを使っている」と獣医のジョーダン・コーセン(Jordan Kocen)医師(50)はいう。

 このクリニックは、米バージニア(Virginia)州フェアファックス(Fairfax)の「サウス・ポーズ(South Paws)」。「使っているはりの種類は人間用と同じもの。はり治療の基本的な経路は人間も動物も一緒。神経に刺激を与える方法も一緒だ」

 取材時にはり治療を受けていたのは13歳のネコ、アレクサ(Alexa)。頭がぐらつき、首を縦に振るような動きが止まらないという原因不明の症状で来院したが、治療開始から4週間で改善したと、飼い主のジョーン・ファーガソン(Joan Ferguson)さんは喜ぶ。「ここに来るまでにMRI検査を2回に脊椎穿刺を1回、それに血液検査も受けさせた。お金はずいぶんかかったのに、結局何もわからなかった」

 途方に暮れて頼ったのが、はり治療だったという。背骨に沿って林のようにはりを立てられたアレクサは、目をしばたたかせることさえなく、むしろ安らいだ表情を浮かべていた。

 ペット産業に次々と新たなアイデアが飛び出し、絶えず市場拡大を続けている米国では今、代替療法を取り入れる獣医が増えている。

 業界団体によると、世界では8万6000件の獣医医院のうち、はり治療を行っているのは900~2000件といわれ、その数はさらに増えている。

 コーセン医師は86年に獣医として開業、はり治療を取り入れているのは95年からだ。施術した80%で症状に改善がみられているという。現在コーセン医師をかかりつけとするペットたちは約1500匹。1日8~15匹を助手と2人で診察する。診療代は1回95ドル(約9000円)だ。

 はり治療は「以前よりも受け入れられやすくなっている」とコーセン氏は、長年の患者である11歳のセント・バーナード犬、レクサス(Lexus)に寄りかかりながら語る。

 レクサスは2歳のときから毎週のようにてんかん発作に悩み、飼い主のサリー・ラブ(Sally Rabb)さんが連れて来て、4年前から毎月のはり治療と、毎日5回の抗てんかん剤の投薬を受けている。ラブさんは治療についてこう述べた。「治療が終わるとレクサスの状態が変わったのが分かる。クリニックに着くと全速力で車から出ようとするわ。ここに来るのが好きなのね」(c)AFP/Virginie Montet