【7月20日 AFP】アフリカの一部の国において、男性同性愛者(ゲイ)のエイズウイルス(HIV)感染率は、男性人口全体の感染率に比べて10倍も高く、偏見を恐れて感染を隠す傾向や、治療法へのアクセスの少なさ、不十分な検査などが拡大の一端を担っているという報告が、20日発行の英医学専門誌「ランセット(Lancet)」(電子版)に掲載された。

 報告した英オックスフォード大(University of Oxford)の医師らによる研究チームは、2003~09年にかけて発表されたエイズウイルスに関する研究を調べた。アフリカ全体で国ごとの感染率はさまざまだったが、研究されていた国々の大半で、異性愛者よりも同性愛者の男性の感染率が著しく高く、西アフリカの一部の地域ではゲイたちの感染率が10倍も高かったことを発見した。

 サハラ以南の地域では、偏見を恐れるがゆえの沈黙や、周囲からの圧力や差別が強く、同性同士で性交渉をもつ男性たちのエイズ感染の危険を拡大しているという。また、同性と性交渉をもつ男性の多くが女性とも交渉をもっており、危険はゲイに限らないと強調している。

 アフリカ多くの国では同性愛に対する強い反感が政治的、宗教的、社会的に定着しており、それによって感染者の孤立や、感染者に対する嫌がらせや偏見が生まれる。結果、感染者は沈黙したまま危険な性行為におよび感染に拍車を掛けているという。論文では「無防備なアナルセックスは当たり前で、知識へのアクセスも予防手段も不適切。また、同性と性交渉をもつ多くの男性が売春も行っている」と指摘された。

 また、感染を隠ぺいしておこうとする傾向があまりに強く、アフリカにおけるゲイたちの性行為に関するデータは不完全だったり、欠落部分があることが多いことも報告された。

 国連合同エイズ計画(Joint United Nations Programme on HIV/AIDSUNAIDS)が2008年に発表した統計では、全世界のHIV感染者は3300万人で、その3分の2がサハラ以南に暮らしている。(c)AFP