【7月16日 AFP】スペイン北東部パンプローナ(Pamplona)で8日にわたって開催された恒例の牛追い祭り「サン・フェルミン(San Fermin)祭」は14日に終わった。今回は、男性1人が牛に角で突かれて死亡したが、祭りに参加したフレン・マディーナ(Julen Madina)さん(54)は、5度も牛に突かれたことがあるにもかかわらず、牛追いを止める理由はないと語る。

 約40年間、サン・フェルミン祭に参加しているというフレンさんは、「牛追いは、祭りの原動力であり、魂だ。牛追いがなくなれば祭りは死んでしまう」と語る。しかし、死者が出たことで、より厳しい安全措置を求める声や、動物愛護団体から伝統ある牛追いを止めるよう新たに要求する声が上がった。

■牛追いで1人死亡

 牛追い祭りに参加していた工場労働者のダニエル・ヒメノ・ロメロ(Daniel Jimeno Romero)さん(27)は10日、集団から外れた雄牛に、首や胸を突かれて死亡した。ダニエルさんが保護用に設置された木製のフェンスの下に逃げ込んだ直後に、牛の右の角で突かれる瞬間をとらえたテレビ映像が放映された。

 ダニエルさんは、1911年にサン・フェルミン祭が始まって以来、15人目の死者となった。牛追いによる死者は、1955年に22歳の米国人が死亡して以来だった。

 12日の牛追いでは、集団から外れた別の牛に男性4人が突かれた。4人のうち2人は重傷だった。このほかにも、祭りの開催期間中には、オーストラリア人、英国人、米国人ら観光客を含む数十人が牛に体当たりされたりひき倒され、骨折したりあざを作るなどのけがを負った。

 牛追いでは、街の闘牛場に通じる825メートルの石畳の上で、1頭700キロにもなる雄牛の集団が大きな音を立てて走ってくる前を、群衆が駆ける。牛追いの後、牛はその日のうちに闘牛士と闘い、殺される。牛追いの参加者は主に男性で、平日は約2000人、週末は3500人が参加する

■安全措置を要求する声、市は「すでに強化」

 スペインの日刊紙ムンド(El Mundo)は、牛追いの参加人数を制限し、集団を外れた牛に追いこまれた参加者のために避難用の出口を設けるよう求めた。

 米作家アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)作『日はまた昇る(The Sun Also Rises)』で一躍有名になったサン・フェルミン祭だが、ヨランダ・バルシナ(Yolanda Barcina)パンプローナ市長は、当局はすでに祭りの安全措置を強化したと主張する。

 警察は、飲み過ぎた人やビーチサンダルをはいた人、カメラで牛追いを撮影する人の参加を止めさせているという。

 同市長は「ダニエルさんが牛に突かれる前から、牛追いの参加者からは何年も、市が講じた安全措置のせいで祭りの興奮や危険性が失われると不満が出ていた」と指摘した上で、「どんなに多くの安全策がとられていても、牛は動物です。だれかの命が失われる可能性はある」と語った。

■動物愛護団体、祭りのボイコット求める

 一方、牛が殺されることに懸念を示し、牛追いを完全に禁じるよう求める人たちもいる。

 国際動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of AnimalsPETA)」は、7000万ユーロ(約92億円)の観光収入をもたらす海外からの観光客に祭りへの参加をボイコットするよう呼び掛けるキャンペーンを繰り広げている。

「娯楽のために動物を苦しめ殺すのは、(中世の)暗黒時代のものだ。スペインが欧州内で現代国家としての地位を主張するのであれば、まず初めに行うべきは動物虐待を禁じることだ」とPETAの欧州地区広報、Poorva Joshipuraさんは指摘する。

「牛追いに使われる雄牛は、鋭い棒や電気ショック棒でたたかれおびえて走っている。牛たちは、すべって転んだりして、闘牛場につづくパンプローナの道を走るのです」

 市長は、それでも、牛追いを止めるよう求める声を拒否する。「疑う余地もなく、サン・フェルミン祭は牛追いがなくては意味がない。牛追いは祭りの一部であり、われわれの文化だ」と市長は、断言した。(c)AFP