【7月2日 AFP】作家の故・三島由紀夫(Yukio Mishima)氏を被写体とした未発表ものを含む写真や、本人の自筆書簡が5日、東京で行われる古書の競売会「明治古典会(Meiji Kotenkai)」に登場する。

 出品されるのは米国の店で発見され、08年に東京の古書店に持ち込まれた写真数点と書簡2通。書簡は1967年と70年に米国人の友人で、美術館館長のヤン・フォン・アドルマン(Jan von Adlmann)氏にあてたもので、2人のおそらく特別に親密だった関係がうかがえる。

■殉教者「聖セバスチャン」と『憂国』の写真を同封

 書簡は2通とも、3世紀のローマのキリスト教の殉教者で、同性愛の象徴的存在として描かれることの多い聖セバスチャン(Saint Sebastian)について触れている。1通では、聖セバスチャンに関する美術書と思われるアドルマン氏からの贈り物に感謝を示し、その「残忍なリリシズム」を賞賛している。

 また、もう1通には三島氏自身が、半裸の状態で手を頭上で縛り上げられ、体に刺さった矢から血がしたたる聖セバスチャンに扮(ふん)し、篠山紀信(Kishin Shinoyama)氏が撮影した写真「聖セバスチャンの殉教(Martyrdom of Saint Sebastian)」が同封されていた。

 担当する古書店によると、これらの写真のうち1枚は未発表で今回初公開。下半身の部分まで露出しており、三島自身はそちらが気に入っていたかもしれないが、出版が許可されなかったのではないかという。

 もう1シリーズは、1966年に三島氏自身が監督し、旧大日本帝国陸軍の中尉で主演した映画『憂国(Yukoku、英題Patriotism)』のスナップで、後の三島氏の自殺を予告するかのように「腹切り」の方法を説明したものだった。(c)AFP