【6月21日 AFP】アフリカ南東部の国、マラウイの植民地時代の首都ゾンバ(Zomba)でバナナ売りを営むエリザ・マンヨザさん(39)は、米国の歌手マドンナ(Madonna)さんの曲はひとつも聞いたことがない。米ポップス界の象徴的存在であるマドンナさんについて、マンヨザさんが唯一知っているのは、マラウイの孤児たちを養子にしていることだけだ。

 AFPのインタビューにマンヨザさんは「(マドンナさんは)わたしたちの子どもたちを助けてくれるいい人だと聞いているわ」と述べた。マンヨザさんは生後9か月の子どもを背負い、頭の上のかごにバナナを乗せて売り歩いている。

 マンヨザさんは、マドンナさんがマラウイの児童養護施設で3年前に出会ったデービッド・バンダ(David Banda)ちゃんを養子に迎えたことは知っていたが、同国最高裁が最近、2人目として女児チファンド・マーシー・ジェームズ(Chifundo Mercy James)ちゃんの養子縁組申請をマドンナさんに認めたことは知らなかった。

 それは素晴らしいニュースだし、マドンナさんは素晴らしいとマンヨザさんは思っている。しかしこうも言う。「彼女はマラウイから何人連れ出せるのか。マドンナに任せっぱなしにしないで、自分の国の子どもたちを養子にしようという裕福なマラウイ人はいないのかしら」

 マンヨザさんと同じ疑問はマラウイ全体で聞かれる。マドンナさんの養子縁組は、国際間の養子縁組について国際的に賛否両論を巻き起こした。
 
■エイズで150万人が孤児の最貧国マラウイ

 孤児たちの窮状に関し、マラウイは特に悲惨な事例だ。世界の最貧国のひとつで、政府の発表によると、親のエイズ(AIDS)によって孤児となった子どもたちが約150万人。総人口の10%近くにも上る数字だ。

 マンヨザさんが暮らすチカンダ(Chikanda)のスラム街は、英植民地時代の街ゾンバの周縁にあるが、新たに開設された児童養護施設は12件。その多くが過去2年間にできた。

 米ニューヨーク(New York)州と同サイズの小国マラウイのなかには、そうした児童養護施設が何百も散在する。

 マドンナさんが設立した慈善団体「レイジング・マラウイ(Raising Malawi)」は、マラウイ中部のムチンジ(Mchinji)にある「希望の家(Home of Hope)」に最新式の養護施設を寄贈している。マドンナさんの1人目の養子デービッドちゃんは、ここで育てられていた約500人の子どものひとりだった。

 また現在の首都リロングウェ(Lilongwe)で約1万人の孤児を世話をする「コンソール・ホーム(Consol Home)」にも、保育施設を寄贈した。

 マラウイの孤児たちのためにもっと政府が動かないのはなぜかという疑問は、国内にこだましており、特に政治家や富裕層に非難が向けられている。

 マンヨザさんは、「マドンナですらこの国の孤児の問題は深刻だって分かっているのに、金持ちのマラウイ人や政治家はどこでなにをしているの?政府はどこにいったの?いくらマドンナにはお金があるといっても、彼女1人では解決できない」と、現在の状況を嘆いた。(c)AFP/Felix Mponda