【5月26日 AFP】20世紀最大のスクープ記事の1つに数えられる、1974年に当時のリチャード・ニクソン(Richard Nixon)米大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート(Watergate)事件について、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は25日、当時、同紙が発表まであと少しだったことを明らかにした。

 ニューヨークタイムズによると、2人のワシントン・ポスト紙(Washington Post)記者をジャーナリズムの象徴に仕立て上げたこのスキャンダル事件について、ワシントン・ポストよりも前に、ニューヨーク・タイムズの記者2人に一部情報が明らかにされていたという。

 1972年、退職間近だったニューヨーク・タイムズ記者のロバート・スミス(Robert Smith)氏は、やがてホワイトハウスにまで及ぶことになるこの陰謀・汚職劇の一部について、当時のパトリック・グレイ(L. Patrick Gray)米連邦捜査局(FBI)長官代行から聞かされていたというのだ。

 ニューヨーク・タイムズによると、スミス氏は、「グレイ氏から、司法長官が隠ぺい工作に関与していると教えられた」と、会合を思い返して語った。「わたしが、『どのくらい上まで及ぶ?大統領まで?』と聞いたところ、彼は座ったままわたしをみつめて何も答えなかった。けれどその答えは、彼の表情に出ていたよ」

 スミス氏は、グレイ氏が明らかにした情報を、ニューヨーク・タイムズのロバート・フェルプス(Robert Phelps)編集長に伝えた。しかし、当時ニューヨーク・タイムズは別の政治記事を追っており、やがてスミス氏は、エール大学ロースクール(Yale Law School)で学ぶために同紙を去ることになり、記事は立ち消えになったという。

 その後、ワシントン・ポスト紙記者のボブ・ウッドワード(Bob Woodward)氏とカール・バーンスタイン(Carl Bernstein)氏が、1972年の大統領選挙戦のさなかにワシントンD.C.(Washington D.C.)で起きたウォーターゲートビル内の民主党全国委員会(Democratic National Committee)本部への侵入事件へのニクソン政権の関与を、一連のスクープ記事で暴露することになった。

 侵入者らは、選挙期間中の民主党の行動を監視するために盗聴器をしかけようとしていたことが明らかになり、裁判で有罪判決を受けた。

 今回のニューヨーク・タイムズの記事が事実であれば、当時、FBIの幹部2人が報道機関に対してこの事件をリークしていたということになる。

 ウッドワード氏とバーンスタイン氏に情報を提供した「ディープスロート(Deep Throat)」であることを4年前に告白した当時のFBI副長官マーク・フェルト(Mark Felt)氏は、前年12月に死去している。(c)AFP