【5月23日 AFP】第62回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で22日、前年死亡した俳優ヒース・レジャー(Heath Ledger)の遺作となったテリー・ギリアム(Terry Gilliam)監督(68)の『Dr.パルナサスの鏡(The Imaginarium of Doctor Parnassus)』のワールドプレミア上映が行われた。

 映画会社との衝突や撮影時のトラブルが多いことで知られているギリアム監督だが、4500万ドル(約43億円)の制作費が投じられた同作の撮影中に見舞われたヒース・レジャーの死という出来事は過去最悪の経験だったという。

「作品を完成させるには想像力が必要だった。エンドクレジットに『ヒースとその友人たちによって』とある。この作品はヒースの死によって変えざるを得なくなったが、彼のためでなけれはこの作品を完成できなかったと思う」

 監督は未完成の部分についてプロットを変更せず、代わりにヒースの友人だった3人の俳優、ジョニー・デップ(Johnny Depp)、コリン・ファレル(Colin Farrell)、ジュード・ロウ(Jude Law)にヒースの代役を頼んだ。

 同作は、主人公のトニー(Tony)が「不思議の国のアリス」のように魔法の鏡を通り抜けて異次元の世界へ行くというファンタジー。そこで監督は、3つの異次元界に行った主人公が、それぞれ別の姿に変わるという設定に脚本を書き換えたという。

「なぜ3人に頼んだか?1人ではヒースの代役は演じきれなかったからだ。彼は最も傑出した俳優の1人だった」と監督は話す。「出演者、そして制作スタッフ全員が、この作品を必ず完成させようと思っていた」

 カンヌ映画祭でコンペ外部門の出品作として上映された同作は、批評家たちから温かく迎えられた。バットマン・シリーズ『ダークナイト(The Dark Knight)』の撮影中にこの作品のラフスケッチなどを見たヒース自身が、ぜひトニー役を演じたいと名乗り出たのだという。
 
 ギリアム監督は、この映画を完成させられて「自分は世界一でラッキーな男だ」と笑う。

 レジャーは、同性愛者を演じた『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』の演技でオスカーにノミネートされるなど一躍国際的に脚光を浴びたが、2008年1月22日、米ニューヨーク(New York)の自宅で処方薬の過剰摂取のため28歳の若さで死亡しているのが見つかった。(c)AFP/Claire Rosemberg