【5月20日 AFP】目まいが映画の「衝撃度」を示す指標だとすれば、ラース・フォン・トリアー(Lars Von Trier)監督の作品で登場する性器を切り取る生々しいシーンは、カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)の歴史で見れば、最もショッキングなものではなさそうだ。

 18日に上映されたトリアー監督の『Antichrist』では、2400人の観客のうち、気絶した、もしくは気分を悪くして途中で出て行ったは「わずか」4人だったとも言える。2002年のギャスパー・ノエ(Gaspard Noe)監督の『Irreversible』では、モニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)の鬼気迫るレイプシーンが延々と流れると、約20人が体調不良を訴えた。
 
 愛と狂気を描いた『Antichrist』には、生々しい性描写や性器切断場面が登場する。観客は、息切れを起こし、不快感から身もだえしたが、上映が終了するとブーイングと喝采が入り混じっていた。

 主演はウィレム・デフォー(Willem Dafoe)とシャルロット・ゲンズブール(Charlotte Gainsbourg)。息子の死の悲しみを乗り越えようと森を訪れた夫婦を演じ、力強い演技を見せている。

 映画は性交のスロー映像から始まり、過激な暴力シーンへと移り、ゲンズブールがはさみでクリトリスを切り取る痛々しいシーンでクライマックスを迎える。

 トリアー監督は、上映後の記者会見で、好意的ではない雰囲気の中、「これは罪や性について描いた非常に暗い夢だ」と語った。(c)AFP