【5月15日 AFP】数か月で80万人が犠牲になった1994年のルワンダ大虐殺から15年。かつての被害者と加害者は果たして共存できるのかに焦点を当てたドキュメント映画『My Neighbor My Killer』が14日、第62回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で上映された。

 コンペティション外で出品された映画を製作したのは、米国で活動するアン・アギオン(Anne Aghion)監督。2001年から、「ガカカ法廷」を通じて正義と和解をもたらそうとする人々の姿を撮り始めた。だが、米国とルワンダを何回も行き来しながら1万1000回にも及ぶ法廷を傍聴し、人々の心の深い傷を取材しているうちに予定の撮影期間は過ぎた。撮影時間は350時間にも達した。

 なかでも、ガフンバ(Gafumba)村のフェリシテ(Felicite)さん、ユーフラジー(Euphrasie)さんの2人の女性のもとには足しげく通った。2人とも、ツチ(Tutsi)人の夫を虐殺で失ったというフツ(Hutu)人の未亡人だ。

 フェリシテさんは「わたしは今、生きてもいなく、死んでもいない、心を閉ざした状況です」と話す。ナイフが人を切り裂く音を今でも思い出し、震えが止まらなくなるという。ユーフラジーさんは、おんぶしていた赤ちゃんを引きはがされ、殴り殺された上に遺体を切り刻まれたという辛い経験がある。

 映画は、資料映像は一切使用せず、ガカカ法廷の様子や人々へのインタビューで構成されている。地元の言葉で「草の上の正義」を意味するガカカは、虐殺の加害者に罪を告白させ、被害者に対し謝罪するよう促すもの。ガカカ法廷で自白・謝罪した被告は、刑が軽減されることになっている。

 アギオン監督は「極端な状況のなかで人々がどのように共生しているのか、興味があった。現在はある程度正常化して共存関係にあるが、あのような狭い土地で、加害者の隣で生活していかなければならないという状況は察するにあまりある」と語る。なお、ガカカ法廷についてはやや懐疑的だという。「確かに平和になっているけれど、ガカカ法廷のおかげなのか、時がたったからなのか、わからない」(c)AFP/Claire Rosemberg