【5月13日 AFP】欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)は14日、仏領ギアナの宇宙センターから、140億年前の宇宙の起源を探るための宇宙望遠鏡「ハーシェル(Herschel)」と「プランク(Planck)」を搭載したロケットを打ち上げる。

 2基に投じられた16億ユーロ(約2100億円)という額は、欧州がこれまでに開発した宇宙物体の中では最高額だ。開発費の額の大きさは、2基が解明に挑む謎のスケールの大きさを表している。2基が解き明かそうとする謎は、「星や銀河がどのように形成されたか、ビッグバンはいつ発生したか、ダークマターやダークエネルギーとは何か、宇宙は永遠に膨張を続けるのか、あるいは『ビッグクランチ』により宇宙は急激に収縮するのか」といったものだ。 


■ハーシェル

 宇宙に打ち上げられる過去最大の反射器「ハーシェル」は、これまでに検出されたことのない赤外線放射の波長を走査し、星や銀河がどのように形成されたのか、形成されつつあるのかなどの手掛かりとする。
 
 宇宙の中で最も温度の低い物体でさえ、熱を放射していることから、そのような物体を赤外線望遠鏡で「見る」ことは可能だ。地球の大気圏を超えたはるか上空の軌道に打ち上げられる「ハーシェル」は、エネルギースペクトルの赤外線部分の最も遠い地点までカバーすることができる宇宙で唯一の機器となる。

 新しく得られたデータは、一部の天文学者が主張するようにすべての銀河が同時に形成されたのか、または、銀河には絶えず形成されるようなメカニズムがあるのかについても明らかにしてくれるものと期待されている。 

 銀河と、銀河を構成する恒星のどちらが先に誕生したのかについても分かるかもしれない。


■プランク

 アリアン5(Arien5)ロケットに「ハーシェル」と共に搭載される「プランク」は、全長1.5メートルの望遠鏡で、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を検出する超高感度の検出器が2個取り付けられている。

 1965年に米国で2人の電波天文学者により偶然発見されたCMBは、すぐさま、宇宙を作り出した爆発「ビッグバン」の発生に関する最良の証拠であると認識されるようになった。

 CMBは、ビッグバンの最初の爆風が冷却されたあとにできた残がいであり、ビッグバン直後に発生した「化石」放射の一種と考えられる。

 「プランク」は、どこにでも存在するが特定の発生源はないこの放射を検出することで、誕生期に近い宇宙を観測することになる。

 「プランク」は、宇宙の物質の約23%を構成するとされながらも直接的に検出されたことが一度もない「ダークマター」に関する手掛かりを得る可能性もある。

 「ハーシェル」の予定稼働年数は3年間で、機器冷却用のヘリウムが切れた時点でミッションは終了する。「プランク」は最低15か月の間、データを収集することになっている。(c)AFP/Marlowe Hood