【5月9日 AFP】前年5月に発生し、約8万7000人が死亡または行方不明となった四川大地震は、中国当局のパンダ育成計画にも大きな痛手を与えた。パンダの重要な食料供給源の竹林が破壊され、パンダの性欲は減退、さらには飼育施設の主要な収入源だった観光収入も激減した。

 現在、パンダは、中国各地の飼育施設に300頭ほど、野生におよそ1200頭が生息している。

 四川大地震で死亡した野生のパンダの頭数はわかっていないものの、地震は、山間部のパンダ生息地の竹林を破壊し、また、被災を免れた竹林へも近づくことを困難にした。

 また、施設で飼育されているパンダにとっても、四川大地震はちょうどベビーブーム期と重なったこともあり、飼育員らは十分な食料を調達するのが厳しい状況となっている。

 四川(Sichuan)省にある成都(Chengdu)のパンダ育成センター「Chengdu Giant Panda Breeding Centre」のディレクター、Wang Chengdong氏は、「最大の影響は、パンダの食料供給源に及ぼした影響だ。多くの竹林が破壊された」と語る。同施設では、83頭のパンダが飼育されている。

 Wang氏は、「パンダは食べ物の好き嫌いが激しく、生息地の竹を食べることに慣れている。しかし、今はそれを探すのが難しくなった」と述べる。「食物は、リラックスする上で非常に重要。パンダはリラックスした方が繁殖しやすい」

 一方、同飼育施設にとって重要な収入源だった観光収入も、四川大地震の影響で、2008年は前年と比べて約半分に減少した。2007年には60万人だった訪問客は、08年は30万人ほどに減ったという。

 また、震源地に近い四川省・臥龍(Wolong)の飼育センターの施設の多くは地震で倒壊したため、再建する必要がある。臥龍の飼育センターで行われていたパンダを野生に戻す取り組みも、遅れが出ているという。また、飼育施設でのパンダのベビーブームによって、パンダを野生へ戻す取り組みは、ますます急を要する課題となっている。

 Wang氏は、「パンダと生息地を保護する必要がある。しかし、まだ長い時間がかかるだろう」と語った。(c)AFP/Robert J. Saiget