【5月3日 AFP】インドのニューデリー(New Delhi)で約80年前に開設された鳥の専門病院「Jain Charity Birds Hospital」の獣医師長Y.D. Gaur氏は、毎日のように殺到する「患者」の対応に負われている。鳥たちが患う病気は、潰瘍(かいよう)、ぜんそく、麻痺、腫瘍(しゅよう)などさまざまだ。

 集中治療が必要な鳥は入院させ、外科手術をする場合もあるという。大半はその場で治療し、その日のうちに退院させる。病気のペットを心配した飼い主が連れてくるケースが多いが、この病院に入院させるということは、「永遠のお別れ」になることは承知の上だ。

 1927年の開設以来、この病院の運営方針は「病院で治療した鳥はすべて逃がすこと。飼い主のもとに返してはならない」とされている。

「鳥の病院」はジャイナ教(Jainism)の教義に基づいて運営されている。ジャイナ教はインド最古の宗教の1つで、あらゆる生き物の中に聖なる魂があるとしている。生き物を傷つけてはならないとされており、小さな虫をうっかり吸い込むことがないようマスクをかける聖職者もいる。

 病院の運営資金は個人の寄付金でまかなわれ、治療費は無料だ。熱意ある支持者がいるおかげで、治療に必要な資金や薬、鳥の餌が不足したことはこれまで一度もないという。

 3階建ての病院の建物には、手術室、集中治療室、入院用の個室などの設備がある。病院の評判をさらに高めているのは、その極めて清潔な環境だ。鳥の糞や悪臭は一切ない。インドの国立病院の大半より清潔だと、この病院を初めて訪れたある主婦は言う。常に3000-5000羽の「患者」が収容されて治療を受けている。回復率は90%に上るそうだ。治療以外に、無料健康相談も受け付けている。

 この病院が観光ガイドブックに取り上げられたおかげで、海外からの観光客も大勢訪れるようになった。一方、病院を訪れるインド人は隣接したジャイナ教の寺院を参拝した後、敷地内を歩き回るだけだ。(c)AFP/Elizabeth Roche