【4月29日 AFP】これまでソマリア沖を航行する船舶の護衛を任務としてきた仏海軍のフリゲート艦ニボーズ(Le Nivose)が26日、本格的な「海賊討伐作戦」を開始し、ケニア・モンバサ(Mombasa)港を出航して、このところ海賊被害が集中しているセイシェル沖の海域へと向かった。

 各国の艦艇はこの数か月、海賊を取り締まるためアデン湾(Gulf of Aden)とインド洋を巡回しているが、船舶を護衛するだけの任務と、海賊を拘束しても法律上の問題からしばしば釈放せざるを得ない状況に、いらだちを募らせている。

 実際、ソマリア沖での海賊犯罪に関する司法はあいまいだ。

 無政府状態のソマリア本国へ拘束した容疑者を移送することに消極的な艦艇は多く、かといって第三国へ身柄を引き渡す法的手段は乏しい。法律上の混乱に起因するこうした理由から、これまでに各国の艦艇が捕らえた海賊のうち、120人以上が釈放されている。

 だが、米英はこのほど、海賊の移送や訴追手続きの円滑化を目指して、東アフリカ沿岸諸国で唯一海賊に関する法規定があるケニアと覚書を結んだ。欧州連合(EU)も今年3月、ケニアとの間で包括協定を締結した。

 これらの協定で、ニボーズなどの艦艇は心置きなく「海賊狩り」を行えるようになったのだ。

 ニボーズは前週、協定に基づき、モンバサ港で11人の海賊の身柄をケニア当局に引き渡した。ただ、一部の専門家からは、ソマリア海賊の第三国への身柄引き渡しは形式的なものにすぎず、さらにケニアの裁判所や刑務所のレベルは標準以下だとの指摘も出ている。

 米有力シンクタンク、ランド研究所(RAND Corporation)の海賊・テロ問題専門家、ピーター・チョーク(Peter Chalk)氏も、「ケニアの司法システムは整備されておらず、汚職もはびこり、能力にも欠ける」と憂慮している。(c)AFP/David Dieudonne