【4月27日 AFP】ポンペイ(Pompeii)の街を壊滅させ、3万人以上の死者を出したとされる紀元前79年のベスビオ(Vesuvius)火山の大噴火から約2000年。当時のような大噴火を起こす可能性は否定できないと複数の学者が主張する中、この火山は今、注意深く監視されている。

 ナポリ大学(University of Naples)の火山学者クラウディオ・スカルパティ(Claudio Scarpati)氏は、「ベスビオは世界で最も危険な火山のひとつ。今も活発な活動を続けており、噴火した場合は60万人が犠牲になるかもしれない」と言う。

 イタリア南部ナポリ(Naples)の湾を見下ろす標高1300メートルのベスビオ火山の山腹には数十個のセンサーが設置され、火山活動、噴出されるガスの温度、地形の変化などを記録している。各センサーは24時間絶え間なく、それらのデータを約9キロ西にあるナポリ市内のベスビオ観測所に送っている。

 また、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の環境監視衛星エンビサット(ENVISAT)からも毎月、地形の変動に関するデータが送信され、観測所のデータを補完・更新する。 

 観測所には最低でも2人の専門家が常駐し、データを分析。伝達手段の故障に備え、データは有線、電話、無線といった複数の手段を組み合わせて伝達されている。

■全住民の避難には2週間を要する

 ベスビオ火山は紀元前79年以来、約30回の大噴火を繰り返しており、19世紀以降は専門家の監視下に置かれている。初の観測所設置は1845年。両シチリア王フェルディナンド2世(Ferdinand II)の命によるものだった。最近の大噴火は1944年3月のことで、この時には溶岩が11日間流れ続け、26人が死亡、1万2000人が避難した。

 ナポリ地区の地質学者協会の会長であるフランセスコ・ルッソ(Francesco Russo)氏は今年1月、複数の統計に基づいてはじき出した「今後100年間に大噴火が起きる可能性は27%」という数字を記者会見で発表した。

 自治体の治安当局では、4000人以上の死者を出した1631年の大噴火をモデルに大規模な避難計画を策定している。計画では、火山から半径15キロ以内の「レッドゾーン」に含まれる18都市、住民60万人を避難させることになるが、避難完了までに2週間を要するという。(c)AFP/Emmanuelle Andreani