【4月20日 AFP】20年前の「ベルリンの壁(Berlin Wall)」崩壊の陰に「謎の電話」があったことを、当時歴史的な記者会見で取材したイタリア人記者が、16日に放送されたドイツARDテレビの番組で明らかにした。

 数か月にわたり亡命を試みる国民が相次いだ後、当時の東ドイツ・社会主義統一党(Socialist Unity Party)中央委員会の高官、ギュンター・シャボウスキー(Guenter Schabowski)政治局員は1989年11月9日午後開いた記者会見で、出国の制限を撤廃すると発表してしまった。取材していたイタリア人記者、リカルド・エルマン(Riccardo Ehrmann)氏がその措置はいつ発効するのかと質問したところ、シャボウスキー氏は不意をつかれたように口ごもりながら、「今すぐです」と答えてしまった。

 この予想外の発表により、その夜、数万人の東ベルリン市民が「壁」に殺到。歓喜の声を上げながら国境を越え、西側市民らに迎えられた。建設から28年、「ベルリンの壁」はこのように崩壊した。

 しかし、壁崩壊につながった質問をしたエルマン氏によると、問題の記者会見の前に東ドイツ政府高官から謎めいた電話を受けていたという。電話の相手はエルマン氏と面識があった社会主義統一党の大物で、シャボウスキー氏の記者会見を取材する際、出国規制の緩和について必ず質問するよう念を押したという。
 
 エルマン氏は1929年、イタリアのフィレンツェ(Florence)生まれ。2008年にドイツ連邦共和国功労勲章(Federal Cross of Merit)を授与されている。(c)AFP