【4月9日 AFP】(一部更新)ソマリア沖で8日午前(日本時間同日午後)、海賊に襲われた貨物船の乗組員の1人が8日、米CNNに電話で、船を奪還したが船長が人質になっていることを明らかにした。

 乗っ取られたのはデンマークのA.P.モラー・マースク・グループ(A.P. Moller-Maersk Group)のマースク・ライン(Maersk Line)が運行する米国船籍のマースク・アラバマ(Maersk Alabama)号(1万7500トン)。8日午前7時30分(日本時間同日午後1時30分)ごろ乗っ取られた。同船には非武装の米国人20人が乗り込んでいた。

 ケン・クイン(Ken Quinn)2等航海士がCNNに携帯電話で語ったところによると、乗組員らは海賊4人に反撃し、数時間後にマースク・アラバマ号を再び掌握した。乗組員たちは海賊1人を約12時間拘束した後に解放したが、海賊たちは身代金目当てで拘束したリチャード・フィリップス(Richard Phillips)船長の解放に応じていないという。

 海賊は船長とともに救命ボートでマースク・アラバマ号を離れた。フィリップス船長とは無線で連絡を取り合っているという。
 
 マースク・ラインも海賊はすでに船を離れたが、乗組員1人が拘束されていることを確認した。同社の声明によれば、ほかの乗組員は無事で負傷者もなく、現在海軍を始めとする関係当局と緊密に連携しているという。

 マースク・アラバマ号は国連世界食糧計画( World Food ProgrammeWFP)の援助物資である5000トン以上の食糧を積んで4月16日にケニアのモンバサ(Mombasa)に入港する予定だった。ケニア・ナイロビ(Nairobi)のWFPの広報担当者によると、ソマリアとウガンダ向けのトウモロコシと大豆の混合物4097トン、ケニアの難民向けの植物油990トンなどを運んでいるという。

 1991年に当時のモハマド・シアド・バーレ(Mohamed Siad Barre)大統領が追放された後、ソマリアは中央政府が事実上存在しない状態に陥り、人口の約半数にあたる325万人が援助を必要としている。

 ソマリア沖で船が襲われたのは過去5日間で6隻目。米国の商船が乗っ取られたのは19世紀初頭のバーバリ戦争(Barbary Wars)以来初めてだとみられる。各国海軍が海賊対策を強化しているにもかかわらず、ソマリア沖の治安の悪さがあらためて印象づけられるかたちになった。ある米国防省高官は日本時間9日午前、AFPに対し、米海軍のミサイル駆逐艦ベインブリッジが(USS Bainbridge)が現場海域に到着したと述べた。(c)AFP