【3月31日 AFP】香港(Hong Kong)有数の不動産開発グループ「華懋(チャイナケム、Chinachem)」の会長で大富豪だった故・王如心(英名ニナ・ワン、Nina Wang)さんの愛人だったと主張する風水師が、偽造した遺言状に基づいて遺産相続を主張しているとして訴えられた。

 31日の香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)によると、ワンさんの遺族が弁護団を通じ、風水師の陳振聰(Chan Chun-chuen、英名トニー・チャン、Tony Chan)氏が自分の主張の根拠としている遺言状の署名は偽物だと、香港の裁判所に申し立てた。

 遺族側の弁護団は30日、英国の検視専門家による筆跡鑑定の結果報告を受けた。この鑑定では2003~2007年に残されたワンさんの署名80件を分析し、陳氏の持つ遺言状の署名は偽造されたものだとの結論に達した。

 ワンさんは2007年、ガンのため69歳で亡くなったが、総額1000億香港ドル(約1兆2700億円)とも言われる遺産は周囲の争いの的となってきた。

 陳氏はワンさんと長い愛人関係にあったと主張し、ワンさんが2006年に陳氏だけを受取り人とする遺言書を作成したと述べている。

 しかし、ワンさんの遺族が運営するチャイナケム慈善財団(Chinachem Charitable Foundation)は、ワンさんは2002年にすでに遺産を同財団に贈る遺言状を作成していたとして、陳氏が保管する遺言状の有効性に異議を唱えた。

 陳氏は、声明でいかなる偽造の疑いも否定した。

■生前は夫の遺言状をめぐる争いも

 ミニスカートにお下げ髪といったいでたちで知られたワンさんは、夫の故テディー・ワン(Teddy Wang)前会長の遺産をめぐって生前8年間にわたり、夫の実父と法廷での争いを繰り広げた。この裁判の間、実父側はワンさんが「遺言状を偽造した」と訴えていた。

 夫のワン氏は1990年に誘拐され、行方不明のまま9年後に法的に死亡が宣告された。ワンさんはその後、夫の会社だったチャイナケムを引き継ぎ、不動産業界の一大グループにのし上げた。(c)AFP