【3月25日 AFP】体外受精で胚(受精卵)を子宮内に移植する際、「同時に移植する胚の数は2個よりも1個のほうが着床率が高まり、コスト効果も高い」という、体外受精に対しこれまで広く考えられていた2つの見解と異なる研究結果が25日、発表された。

 体外受精で移植する胚はこれまで、複数移植した方が妊娠に至る率が高いと考えられていた。研究を率いたフィンランド、オウル大学(University of Oulu)のハンヌ・マルティカイネン(Hannu Martikainen)氏は「多胎妊娠の率を減らし、不妊治療価格を受診しやすいものにするにはどうしたら良いか、多くの国で議論されているが、各国の政策者はわたしたちの研究結果に注目すべき」だとしている。

 多胎妊娠の場合、早産のリスクが高く、未熟児や神経の損傷などとの関連が知られている。このため各国では移植する胚の数を制限するガイドラインや規制導入の動きがみられている。

 マルティカイネン氏のチームはフィンランドのクリニックで、40歳以下の女性1500人以上を対象に、1995-99年と2000-2004年の2回の時期にわたって3600件以上の体外受精について調査し、2回の時期の結果を比較した。1回目の調査のころに通常行われていたのは2個の胚の移植で、1個だけの移植を行った女性は全体のわずか4%だったが、2回目の調査ではこれが46%に急増していた。

 英医学専門誌「ヒューマン・リプロダクション(Human Reproduction)」に発表された報告によると、1度に移植した胚が1個だったほうが、生児出生率が5%高かった。

 また、胚1個の移植のほうが、特に多子出産にまつわる出生児の健康問題などを考慮した場合、かかる費用も安いことが明らかになった。マルティカネン氏は「胚1個の移植による出産のほうが、費用も2個を移植した場合と比べて平均1万9899ユーロ(約263万円)安いことが分かった」と語った。

 報告では、体外受精を行うたびに毎回2個ずつ移植していれば、生児出生となる数も増えるが、多くの場合が多子出産となり、1個の胚移植の場合と比べて、1人の子どもにかかる費用は倍以上にもなると結論づけている。(c)AFP