【3月2日 AFP】ダーウィン(Darwin)の進化論に従えば、人類の生存に不利な遺伝的性質は淘汰され、有利な性質のみが自然選択されていくはずだが、それではなぜ、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領をはじめとする左利きの人びとは、人類の中で圧倒的少数派にもかかわらず現在も淘汰されずに存在しているのだろうか。

■左利きは希少ゆえ生き残った?

 南仏モンペリエ(Montpellier)の進化科学研究所「Institution of Evolutionary Sciences」のヴィオレーヌ・ローラン(Violaine Llaurens)氏らの研究で導き出された理由は「左利きは希少な存在だから」というものだ。

 「英国王立協会紀要(生命科学版、Proceedings of The Royal Society B)」の『Philosophical Transactions』掲載のローラン氏らの論文によれば、有史時代の戦闘において、左利きの戦士には右利きの戦士の裏をかくという攻撃上の利点があった。

 さらに左利きの人は、右手も同様に使いこなせる両利きの場合が多い。一方、右利きの人はたいていの作業を右手のみで行ってきたため、両手を使う作業がぎこちなくなりがちだという。

■遺伝と発育環境が関係

  研究によれば、左利き人口の割合は全人口の5-25%で、重要な地理的変異もみられる。

 左利き遺伝子の特定は非常に困難だが、遺伝性があることは確実だとローラン氏らは指摘する。左利きの両親から生まれた子どもが左利きになる確率は、右利きの両親から生まれた場合の2倍以上だという。

 また、母親の胎内のホルモン量など、発育過程での環境も左利きとなる要因の1つとみられている。

■左利きは有利か、不利か

 絶対人口の少なさにもかかわらず、一部の分野では左利きが多数を占める。たとえば創造性の高い職種や、知能指数(IQ)131以上の児童、音楽的・数学的才能に秀でた人たちの間では、左利きが多い。

 ローラン氏らは、こうした特長が、左利きの人が社会的地位を築く上で大きな強みとなってきた可能性を指摘する。

 ちなみに、別のある研究によれば、左利きの人は一般的に右利きの人より収入が多いそうだ。

 一方で、寿命は右利きのほうが数か月-数年長いらしいことが、統計で示されているという。(c)AFP