【2月21日 AFP】20世紀後半50年間の紛争の大半が、多様な生物が生息する地域で起きたとする研究を、保全生物学の国際チームが20日発表した。紛争の大部分は環境に悪影響を及ぼしたが、驚くべきことに環境に良い影響を与えた場合もあったという。

Conservation Biology」誌に掲載された研究によると、1950年から2000年の間に起きた犠牲者1000人以上の紛争のうち81%は、アジアのヒマラヤ山脈(Himalayas)やアフリカ東部沿岸の森林地帯など「生物多様性ホットスポット」で起きた。

 全植物の半数以上、全脊椎(せきつい)動物の42%以上が生息するホットスポットは、地球上に34か所あるが、半世紀で紛争を免れたのはたった11か所。ホットスポットは高い危機にさらされている。

■被害拡大の原因は

 ホットスポットで紛争が起きやすい理由として研究では、山岳地帯や森林地帯には身を隠す場所が多いという点を指摘。また、生物・化学兵器や核兵器の使用で被害が悪化しているという。

 主執筆者のアイダホ大学(University of Idaho)のトール・ハンソン(Thor Hanson)氏は、紛争の影響は、戦闘の前後の活動なども含め「実際の戦闘よりもはるかに拡大する」と述べる。

 小型武器のまん延も「野生生物の肉や製品目当ての狩猟」を助長した。

 1960年以降断続的に紛争に見舞われてきたコンゴ民主共和国(旧ザイール)では、国立公園のカバが密漁によってほぼ全滅し、天然資源は紛争の資金源として武装組織などが不法採掘している。

 紛争が引き金となる人道危機も、環境に大きな影響力があるという。

■わずかながら好影響も

 一方で、紛争で人びとの生活が変化し「目に見える保護活動の機会となる」場合もあるという。韓国と北朝鮮を分断する非武装地帯(DMZ)では、人が住まなくなったことで事実上保護区化し、多くの希少品種が生息している。(c)AFP