【2月18日 AFP】米国のいくつかの州が死刑制度の廃止を検討している。経済危機に見舞われ州の財政が苦しいなか、死刑制度を維持する費用が大きすぎるのがその理由だ。

 全米50州中、現時点で死刑制度があるのは36州で、米国民のおよそ3分の2が死刑制度を支持しているという。死刑制度への姿勢は州ごとに大きく異なるが、モンタナ(Montana)、カンザス(Kansas)、ニューメキシコ(New Mexico)、メリーランド(Maryland)などの州は財政赤字対策として死刑廃止を積極的に検討している。

 米国で死刑制度が復活した1976年以降の死刑執行数が5人以下の死刑執行数が少ない州が、死刑廃止を検討することが多い。

■財政負担が大きい死刑制度

 死刑廃止による予算節約効果は大きい。死刑を執行するまでにかかるコストは終身刑の10倍に上る場合もある。

 死刑に関しては、判決が下されるまで裁判が複雑化・長期化する傾向がある。被告が上訴してさらに長期化する場合も多い。さらに死刑を求刑される被告は自費で弁護士を雇えないことも多いが、その場合は公選弁護人の費用も州政府が負担せねばならない。また、収監施設や死刑執行室の維持費も州の財政にとって大きな負担だ。

 カンザス州では1976年以降、死刑は1件も執行されていないが、現在9人の死刑囚がおり、死刑制度は州財政の深刻な問題だ。

 同州のキャロライン・マクギン(Caroline McGinn)上院議員(共和党)は、州の財政赤字削減を目的として、死刑を7月から廃止する法案を提出した。

 死刑制度廃止団体のスティーブ・ホール(Steve Hall)氏は、「厳しい景気後退に直面し、コストの問題に議員らが真剣に目を向けだした」と評価する。 

 米死刑情報センター(Death Penalty Information CenterDPIC)によると、カンザス州の場合、死刑囚1人にかかる費用は126万ドル(約1億1000万円)、終身刑囚1人にかかる費用は74万ドル(約6800万円)と、死刑囚の方が約70%も多いという。(c)AFP/Lucile Malandain