【2月11日 AFP】南アフリカ・ケープ地方で初めてワインが醸造されてから350年。いわゆる旧世界と新世界のワイン醸造技術が融合された南アフリカワインは、伝統を保ちながらも開拓者精神を失わず、国際市場における評価も高まりつつある。

 同国はアパルトヘイト(人種隔離政策)による経済制裁によって長らく世界市場から切り離されてきたが、アパルトヘイト撤廃に続く15年間の民主主義のもとで同国のワインが世界に知られるとともに高い品質を追求する新しい動きが始まり、ワイン産業は発展を続けてきた。

 ブドウの苗がケープタウン(Cape Town)に初めて植えられたのは、1655年のこと。オランダ東インド会社の中継基地としてケープ植民地を創設したオランダの司令官、ヤン・ファン・リーベック(Jan van Riebeek)の1659年2月2日の日記には次のようにある。「神をたたえよ!今日、ケープのブドウが初めて搾られた」

■南アフリカワインに注目するフランスの生産者たち

 ケープタウン郊外のシグナル・ヒル(Signal Hill)に、「Vive la Difference(違いに万歳)」のスローガンが入ったフランス国旗が翻っている。フランスのワイン醸造家ジャン=ヴァンサン・リドン(Jean-Vincent Ridon)さんは、新生南アフリカの可能性を信じてこの地にやってきた。

 この農園では、1800年代に世界中のブドウ園に大打撃を与えた害虫、フィロキセラに耐性がある台木への接木を行わない。ブドウの収穫と選別は手で行い、ブドウは足で踏んで搾られる。この小さなブドウ園は350年前と同じような方法でブドウを栽培し、成功を収めている。ここで醸造された「クロ・ドランジュ・シラー2006(Clos d'Oranje Syrah 2006)」は地元ワインガイドで5つ星を獲得。「エッセンシア2002フルミント(Eszencia 2002 Furmint)」と「ソーヴィニョンブラン(Sauvignon Blanc)」のブレンドは、米国で南アフリカワイン史上最高の格付けをされた。

 リドンさんによると、この国のワイン業界の歴史と実績に注目する多くのフランスの投資家が、ケープタウンに流入しつつあるという。

■経済危機の影響もなし

 ケープタウンに隣接したコンスタンシア(Constantia)地区には、南アフリカ最古のブドウ園がひしめき合う。ここでは、南アフリカワインの代表格、甘口のコンスタンシアワインが生産されている。このワインは、セントヘレナ島で流刑生活を送るナポレオン(Napoleon)が欲しがった、またはフランス国王ルイ・フィリップ(Louis Philippe)が買い占めたとも伝えられている。

 1685年設立のワイナリー「グルート・コンスタンシア(Groot Constantia)」のベニー・ハワード(Bennie Howard)さんは、「南アフリカのワイン産業は、1周して元の地点に戻った、と言っていい。1700年代当時の国際的な人気が復活しつつある」と話した。

 実際、世界的な経済危機でワイン貿易が衰退する中、ワイン生産量世界第9位の南アフリカは2008年、過去最高の4億リットルを輸出した。数々の国際的な賞も総なめにしている。(c)AFP/Fran Blandy