【2月6日 AFP】古代のクジラは陸上で出産していたとの米大による研究結果が4日、科学誌「Public Library of SciencePLoS」(電子版)に掲載された。休息や交尾なども陸上で行っていた可能性もあるという。画期的な発見は、現在は水中で暮らすクジラの祖先は陸上に住んでいたとの仮説を強めるものとなりそうだ。

 研究は全米科学財団(National Science FoundationNFS)が支援する古生物学研究プログラムの一環。

 ミシガン大学(University of Michigan)のフィリップ・ギングリッチ(Philip Gingerich)氏が主導する研究チームは2000年と2004年、パキスタンで約4750万年前のクジラの化石を発見したが、2体の骨が接近しすぎていることが、これまで謎となっていた。

 ギングリッチ氏らは当初、1体の化石は歯が小さいことから、成長した小型のクジラだと考えていた。しかし、歯の大きさに対して肋骨が大きすぎるため、調査を続けた結果、2体の化石は妊娠中の雌クジラとその胎児のものであることが分かった。

 化石の胎児は、現在のクジラと異なり、陸上のほ乳類と同じ頭位分娩の位置にあったことから、ギングリッチ氏は当時のクジラが陸上で出産していた可能性があると考えている。

 また、化石の歯が大きく魚の捕食に適していたとみられることから、研究チームは、当時のクジラは生活の大半は海中で過ごしながら、休息や交尾、出産などは陸上で行っていたとみている。

 研究チームは、今回の発見が古代のクジラの出産の実態や、クジラが陸から海に下りた移行過程を解明する大きな手掛かりになると期待している。(c)AFP