【2月1日 AFP】1日に行われる米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)の王座決定戦、第43回スーパーボウル(Super Bowl XLIII)の生中継に米国民は皆かぶりつきたいところだろうが、米国発国際的な不況の影は観戦中にもちらつきそうだ。

 スポンサー各社は毎年この中継のために特別CMを制作し、競いあうように放映するが、その「CMスーパーボウル」が景気後退の影響を真に受けている。

■自動車大手は軒並みCM断念
 
 視聴率の高いスーパーボウルで流れる1枠30秒のCM枠だが、今年の売り出し料金は過去最高の300万ドル(約2億7000万円)。枠はどうにか埋まったが、ゼネラル・モーターズ(General MotorsGM)、フォード(Ford)、クライスラー(Chrysler)の米ビッグスリーに加え、日本のトヨタ(Toyota)、ホンダ(Honda)、独アウディ(Audi)といった自動車大手は軒並み恒例のCM放映を断念した。

 2004年以来、スーパーボウル中継中のCMの好感度投票を行ってきた広告代理店Pavoneのデビッド・ショフナー(David Shoffner)広報担当は「(放映する)企業の多くは『わが社はこんなに払っている』と示すことに効果があるとして、300万ドルものCM料を正当化している。視聴率に対する投資額で言えば、費用対効果はほかの広告手法に比べて低いだろう」と言う。

■職場では試合よりもCMが話題に

 前回のスーパーボウル、ニューイングランド・ペイトリオッツ(New England Patriots)対ニューヨーク・ジャイアンツ(New York Giants)は、全米で過去最高の9750万人が視聴した。

 米広告専門誌「アドバタイジング・エイジ(Advertising Age)」の05年の資料によると、スーパーボウル視聴者のうち半数が「CMが見たくてチャンネルをあわせた」と回答している。同誌の別の調査では、翌日の職場でスーパーボウルの「試合の話をする」人が半数以下なのに対し、それを超える60%が「CMの話をする」と回答した。

■米最大スポーツ・イベント協賛で企業は国民にアピール

 自動車大手が出控えた今年のスーパーボウルのCM放映だが、「80年で最悪の経済危機、そして1秒10万ドル(約900万円)のCM料にもかかわらず、広告主にとってスーパーボウルが魅力の理由は2つある。CMを目にする視聴者数として、1番組ではやはり最多であること。それから、アメリカ最大のスポーツ・イベントというポジティブなイメージと自社ブランドを連想させることができる点だ」と、フィラデルフィア(Philadelphia)にあるセント・ジョセフ大学(Saint Joseph's University)のジョン・ロード(John Lord)教授(マーケティング学)は語る。

 例えば、現金に困っている人から貴金属を買い取り、その貴金属を溶かして転売する事業で急成長した換金業者キャッシュ・フォー・ゴールド(Cash4Gold)は、過去に差し押さえや自己破産に陥ったことのある2人の著名人、元TV番組の司会者エド・マクマホン(Ed McMahon)とラップ歌手MCハマー(MC Hammer)を起用し、今年初めてスーパーボウルのCM枠に乗り込んでくる。

 経済的破綻を避けようと、家宝さえも売却する米国家庭が急増した08年、同社の業績は前年比2倍となった。Pavoneのショフナー氏は「キャッシュ・フォー・ゴールドの広告は時代のサイン。どの年のスーパーボウル中継で流しても、ちょっと興ざめなのかもしれないが、景気がこうだと特にそうだ」と語った。(c)AFP/Karin Zeitvogel