【1月15日 AFP】米ワシントン・ポスト(Washington Post)紙は14日、国防総省高官が、9.11米同時多発テロに関与したとしてキューバのグアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地に収容されているテロ容疑者の1人について、拷問を加えたことを理由に特別軍事法廷への訴追を取り下げたことを認めたと報じた。

 特別軍事法廷の訴追手続き審査を担当するスーザン・クロフォード(Susan Crawford)氏が同紙とのインタビューで明らかにした。ブッシュ政権の高官が、同基地内で拷問が行われた事実を公式に認めたのは初めて。

 同紙によると、クロフォード氏はサウジアラビア国籍のモハメド・カタニ(Mohammed al-Qahtani)容疑者(30)に対し、「法的に拷問の定義に相当する扱いを行った」と認め、このことがカタニ容疑者を訴追しなかった理由だったと語った。

 カタニ容疑者は、9.11同時多発テロでハイジャックに加わる予定だったとされるが、テロが起きる1か月前、米国への入国を拒否されていた。カタニ容疑者は2002年、アフガニスタンで身柄を拘束されグアンタナモに移送された。ワシントン・ポスト紙によると、同容疑者への尋問は2002年11月から2003年1月までの50日間以上にわたって行われた。同容疑者は2003年4月まで独房に収容されていたという。

 クロフォード氏によると、尋問期間中、尋問官らはカタニ容疑者に対し、長期間におよぶ外界からの完全隔離、睡眠時間のはく奪、裸で低温下に放置するなどの行為を繰り返し、「命を脅かす状況」にさらしたという。

 クロフォード氏は、こうした尋問手法はすべて上部により認可されていたとしながらも、あまりにも過酷で執拗だったと認めた。

 尋問はカタニ容疑者の体に負荷を与え、その結果、同容疑者の健康を損なったという。クロフォード氏は「あのような虐待は不必要だった」と述べ、こうした尋問を「拷問」と認めるのは、医学的検知による健康被害をカタニ容疑者に与えたためだと語った。

 クロフォード氏は、「敵性戦闘員」を裁く目的でジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領が設置した軍事査問委員会のメンバー。

 一方、戦略国際研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)のアナリストのサラ・メンデルソン(Sarah Mendelson)氏は、AFPの取材に対し、カタニ容疑者に対して拷問が行われた事実と、訴追の問題は切り離して考慮すべきだとの見方を示し、訴追の是非は収集証拠を基に判断すべきだと主張した。(c)AFP/Lucile Malandain