【1月15日 AFP】(写真追加)レーダー、光ファイバー、音波探知機、汗をかぎ分ける探索犬――。パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が、武器などの密輸に使用しているとされる地下トンネルの効率的な発見方法が、現在懸命に模索されている。停戦の実現は、こうした地下トンネルを発見できるかどうかにかかっている。

■エジプトとの境界線沿いにトンネル数百か

 イスラエルは、ハマスがガザ地区と隣接するエジプトとの境界線沿いに地下トンネルをめぐらし、食糧や医薬品のみならず、イスラエルに向けて発射しているロケット弾などの武器を密輸していると主張している。

 米国は、トンネル発見の任にあたっているエジプトに対し、装備費などの名目で3300万ドル(約30億円)の資金援助を約束している。
  
 イスラエルは、こうしたハマスの武器密輸ルートが壊滅されるまではガザへの攻撃を停止しないとしているが、米国もエジプトも、総延長14キロの境界線沿いにあるハマスの地下トンネルをどのような手法で探索しているのかは明らかにしていない。

 かつて、ナチス(Nazis)・ドイツは、地中にマイクを埋めて戦争捕虜の脱走を監視した。米軍はベトナム戦争時代、ベトコンのトンネルを発見するための地中探知レーダー(GPR)を発明し、このレーダーは後に考古学の分野で応用されるようになった。

 こうした装置や探索犬の投入は、メキシコから北アイルランドに至るまで世界中で、地下トンネル発見作業における常套手段となっている。

 米デンバー大学(University of Denver)のローレンス・コンヤーズ(Lawrence Conyers)氏によると、トンネルの探索にはGPRが最適で、エジプト・ガザ境界のように砂地が多い場所では、車両後部にレーダーを取り付け、レーダーを引くように移動しながら追う方法が最適だという。

 ただし、GPRは異物を検出しても金属探知機のような警告音は出ず、データを解析・解釈する能力が求められる。そのため、エジプト軍の兵士らが米国製のGPRの使用法訓練を受けているとされるが、コンヤーズ氏は「本当に興味を持ってできる人材が必要。普通の”兵隊の仕事”では収まらない」と専門性が必要な点を指摘する。

 同氏によると、宇宙線により生成された微細なミュー粒子を検知するという少々変わった手法もあり、この研究は始まったばかりだという。

■「建設中のトンネル」には光ファイバーが威力

 一方でイスラエルの研究者らは、掘削が行われていることを示す土壌のほんのわずかなズレも検出・特定できる、画期的な光ファイバーケーブル使用技術を開発した。

 発案者であるテクニオン・イスラエル工科大学(Technion, Israel’s Institute of Technology)のアッサフ・クラール(Assaf Klar)博士によると、この方法の利点は、たった1台のコンピューターで30キロ長の光ファイバーを遠隔監視できる上、光ファイバーが1メートル当たりわずか数ドル以下と安価な点にある。さらに、コンピューターのプログラムがトンネルかどうかを判断し、位置や大きさまで通報するので、兵士らの側に専門知識も不要だという。

 しかし、密輸を行う人物がこの光ケーブルを切断した場合はどうなるか。「光ファーバーの両側にはフェンスを設置してあり、ケーブル自体も地中1メートルに敷設されているから、ケーブルを切断すること自体に掘削が必要で、それもコンピューターが感知する。仮に切断されても、コンピューターがその個所を即座に知らせてくれるため、ただちに接合することが可能だ」(クラール博士)

 この手法は、建設中の地下トンネルの検知には威力を発揮するが、境界付近に数百あるとされる既存のトンネルを検知するのは難しい。既存のトンネルの場合はGPRを使う探索法が最適のようだ。(c)AFP/Charles Onians