【1月13日 AFP】更年期障害の治療で一般的に行われているホルモン療法が、脳の萎縮を加速し、記憶や思考力を減退させるらしいと、12日に発表された米大学の2種類の研究結果が警告した。

 これらの研究は、13日付の米神経学会誌「ニューロロジー(Neurology)」に掲載されるもので、ウェイクフォレスト大学バプティストメディカルセンター(Wake Forest University Baptist Medical Center)の2チームが行った。

 65歳以上の女性を対象にした1番目の研究では、ホルモン療法を受けた人の場合、平均よりも脳組織の喪失が大きかった。

 過去の研究で、プロゲステロン(黄体ホルモン)の合成化合物であるプロゲスチンを使用した製剤が、思考能力や記憶力を衰弱させ、認知症の罹患率を高め、脳機能に障害を生じやすくすることは知られていた。

■記憶をつかさどる領域で脳組織が減少

 その原因について医師らは長年、ホルモン療法により脳が萎縮し、脳内に微小な血管病変を発生させ、血管障害が起こるためと考えていた。

 しかし今回、磁気共鳴映像(MRI)スキャナーでホルモン療法を受けた女性たちの脳を検査したところ、脳内の記憶をつかさどる領域で脳組織の減少がみられた。

 1番目の論文の主執筆者である同大のローラ・コーカー(Laura Coker)氏は「更年期障害の治療でホルモン療法を受けたことのある高齢の女性で、認知症のリスクが高くなることの説明の一つになりうる」と語っている。

■前頭葉と海馬が通常より小さく

 もう一つの研究では、ホルモン療法経験者の脳では、前頭葉および海馬の体積が通常よりもやや小さいことが明らかになった。前頭葉と海馬はどちらも思考力や記憶力をつかさどる領域だ。

 論文は「この発見から、ホルモン療法は通常の記憶機能の維持に重要とされる脳構造に、悪影響を与えていることが示唆される」と指摘した。しかし、「こうした悪影響は、ホルモン療法を受ける以前に、記憶に一定の障害を持っていたとみられる女性において最も顕著だった」と但し書きを付けた。

 2番目の研究は、過去に4~6年間にわたりホルモン療法を経験したことのある71歳から89歳の女性1400人を対象とした。

 これらの結果から、更年期障害に対するホルモン療法は、絶対不可欠を考えられる場合にのみ使用されるべきで、その際には投与するホルモン量を最低限に抑え、治療期間はできる限り最短にすべきだという提言が導き出される。(c)AFP