【1月12日 AFP】(一部修正)イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で行っているイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)に対する軍事攻撃をめぐり、米国のユダヤ人社会が割れている。イスラエルの武力行使を非難する進歩的な動きが台頭しているのだ。

 イスラエルの平和団体「ピース・ナウ(Peace Now)」米国支部の広報担当Ori Nir氏は、今回のガザでの衝突が、米ユダヤ人社会内部の亀裂を広げていると指摘する。「多くのユダヤ系米国人は、(イスラエルの武力行使を)正当な戦いだと見ている。しかし、今回のイスラエルのやり方や、紛争回避のための外交努力が不在だったことに、強い不快感を抱いているユダヤ人もいる」。

 ピース・ナウはこれまで米国内では、強力な親イスラエル・ロビー団体「米国・イスラエル公共問題委員会(AIPACAmerican Israel Public Affairs Committee)」の影に隠れがちだった団体だ。

■きっかけは既存の親イスラエル・ロビー批判

 米ユダヤ人社会における分裂が表面化したきっかけは、2006年に刊行された1冊の書籍だった。

 スティーブン・ウォルト(Stephen Walt)氏とジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer)氏の共著『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策(The Israel Lobby and US Foreign Policy)』は、米国の外交政策を左右するAIPACのロビー活動について、イスラエルの右派政党リクード(Likud)を無条件に支援していると批判。指摘されたAIPAC側は両氏を「反ユダヤ主義者」と糾弾した。

 しかし一方で、この出来事は米ユダヤ人社会の中に、AIPACの強硬姿勢を見直す機運を生み、2008年には平和主義の目標を守る進歩派のユダヤ人らによるロビー団体「Jストリート(J Street)」が誕生した。

■「親イスラエル」とは? 新定義を求める進歩派

 Jストリートは、イスラエルが12月27日にガザへの空爆を開始した直後に、即時停戦を求める署名を集めた。「われわれはイスラエルとのつながりを大事にし、イスラエルの治安と市民の安全に真剣に取り組んでいる。しかし米国人として、またイスラエルの友人、そして支援者として、現在ガザで進められている軍事作戦の続行が米国、イスラエル双方にとって最大の利益になるとは思わない」――Jストリート事務局長のジェレミー・ベンアミ(Jeremy Ben-Ami)氏は、同団体のウェブサイトでこのように語っている。

 現在、米外交専門誌「フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)」が立ち上げた米外交政策に関するブログのライターの1人に、親イスラエル・ロビー活動を批判したウォルト氏が選ばれていることからも、米ユダヤ人社会に進歩主義が広がっている傾向は明らかだ。

 ウォルト氏は今回のイスラエルのガザ攻撃へのブッシュ政権の対応を強く批判し「われわれ(米国)にとってもイスラエルにとっても、『親イスラエル』という言葉の定義を見直すのは、早ければ早いほど良い。言うまでもなく、それはパレスチナ人にとってもずっと有益だ」と記している。(c)AFP/Sylvie Lanteaume