【1月11日 AFP】(一部更新)資源の乏しい国々が、アジアの貧困国の広大な農地をわれ先に買っていく。活動家らはこれを「土地の収奪」と呼び、貧困と栄養不良がさらに悪化しかねないと注意深く見守っている。

 食糧を輸入に頼っている国々は、原油・食糧価格の高騰、バイオ燃料ブーム、そして急激な景気減速の中、自国民の食糧を確保するための対策に追われている。中でも、耕作地が不足している中国と韓国、オイルマネーで懐が豊かな中東諸国が、アジア・アフリカの農地の権利取得に向けた動きをけん引している。

 スペインに本部を置く農業権利団体「Grain」は、最近の報告書で、「今日の食糧および金融の危機が世界規模の新しい土地収奪を招いている」と指摘した。

 同団体によると、こうして確保された農地の目的は、主に「本国の食糧安全保障を念頭に、本国で消費するための作物を栽培するため」と「ヤシ油やゴムなど、経済的利益を得るためのプランテーションを設立するため」の2つに分かれるという。

「こうした傾向により、世界で最も厳しい貧困と飢餓に見舞われている国々の肥沃な農地が急速に外国企業により統合・私物化されている」と、同団体は警鐘を鳴らしている。

 韓国の物流企業・大宇ロジスティクス(Daewoo Logistics)は前年11月、マダガスカルに、約60億ドル(約5400億円)を投資してベルギーの国土の約半分に相当する130万ヘクタールの農地を開発すると発表した。トウモロコシを年間400万トン、パーム油を年間50万トン生産し、その大半を輸出する計画だ。マダガスカルは現在でも世界食糧計画(World Food ProgrammeWFP)から食糧援助を受けている。

■腐敗政府との契約で農民を苦況に

 タイ・バンコク(Bangkok)に本部を置くNGO、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス(Focus on the Global South)のウォルデン・ベロ(Walden Bello)氏は、昨今の世界的な経済危機にあっても、土地を持たない農民を一層の苦境に陥れる可能性のある、1つの「傾向」は脈々と続いていると指摘する。

 その傾向とは、腐敗した政府と土地に飢えた先進国が、農地契約の名のもとで私腹を肥やしているという事実だ。実際、契約の多くは、汚職が横行、または政府が機能不全に陥っているような国々で結ばれている。

 クウェートは前年8月、カンボジアに対し、穀物生産の見返りとして、5億4600万ドル(約500億円)の借款供与に合意した。カンボジア政府はカタール、韓国、フィリピン、インドネシアとも同様の契約を結ぶ準備を進めているという。

 だが、カンボジアのある野党議員は、クウェートのような裕福な国が、コメを輸入するのではなく、わざわざ他国の土地で栽培するという選択肢をとっていることに疑問を呈する。

 この議員は、「カンボジアの農民たちは土地を必要としている」と主張。政府に対し、外国に貸与する土地に制限を設けるべきだと訴えている。

 フィリピンも農地を確保する国際的な動きの1つの焦点になっており、一連の大規模な土地取引が、土地の再分配などの農地改革を求める声と衝突している。

 左派系農民団体、フィリピン農民運動(Peasants' Movement of the PhilippinesKMP)を率いるラファエル・マリアノ(Rafael Mariano)議員は「農地を持たないフィリピンの零細農家の問題を悪化させるだろう」と懸念する。

 しかしフィリピン政府に外国への農地提供を止める様子はない。前年12月にグロリア・アロヨ(Gloria Arroyo)大統領がカタールを訪問した際、両国政府は少なくとも10万ヘクタールの農地をカタールに貸与するための交渉を開始した。(c)AFP/Sarah Stewart