【12月12日 AFP】前週末パキスタンで北大西洋条約機構(NATO)軍のトラック・ターミナルに対し、アフガニスタンの旧勢力タリバン(Taliban)が入念に計画し実行した攻撃は、内陸にあるアフガニスタンに駐留する国際部隊の命綱となるカイバル(Khyber)峠を経由する補給路の危険な脆弱性を浮き彫りにした。

 パキスタン北西部ペシャワル(Peshawar)では前週末、武装勢力数百人がNATO軍ターミナルを襲撃、治安要員を武装解除させ、アフガニスタンに物資を補給するための車両百台以上や物資を焼き尽くす事件があった。同時期に米国はアフガニスタン駐留軍の規模を現在からほぼ倍にする増派計画を明らかにしている。

■不安定な部族地域の中央を通るカイバル峠

 タリバン率いるアフガニスタンの反政府勢力と戦う米軍主導の連合軍、NATO軍主導の国際治安支援部隊(ISAF)が必要とする大量の物資や装備はまず、航路でパキスタン南部にある同国最大の港カラチ(Karachi)に到着する。食糧から燃料、車両、武器まで必需品の入ったコンテナは、トラックでペシャワルまで運ばれ、カイバル峠を経由するルートからアフガニスタン入りする。 

 カイバル峠は全長50キロの山越えルートだが、アレキサンダー大王(Alexander the Great)の遠征の昔から、外国から攻め入る部隊にとって避けては通れない峠だ。しかし、このルートは武装勢力が潜伏するパキスタンの部族地域の中央を貫いている。

 前週末の事件があったものの、NATO・米両軍はパキスタン政府に治安対策の強化を期待するしかない。両軍は物資がパキスタン領内を通っている間は直接管理を行っていないため、両軍の軍事行動の妨害を意図するタリバンの武装勢力にとっては標的になりやすいというのが実情だ。

 リチャード・ブランシェット(Richard Blanchette)ISAF報道官は「アフガニスタンにトラックが入るまでは、輸送の責任は運送企業にあり、安全面ではパキスタン軍にある」という。

■補給の70%が集中する理由

 米国が09年、現在の3万2000人から駐留軍を倍増すれば、装備や物資もさらに必要となることは確実だ。

 米軍報道官によると、米軍主導の連合軍は今でも毎月トラック2000台分の補給を行っているが、うち約70%がパキスタン領内を経由しており、残りの30%は空輸やほかの陸路を使用しているという。

 しかし空輸はコストがかかるうえ一度に輸送できる分量が少なく、またカラチからクエッタ(Quetta)やカンダハル(Kandahar)市経由のルートを使えば、タリバンの拠点を通らなければならない。

 パキスタン以外の国を通過するルートは限られている。アフガニスタンはイランと長い国境を接しているが、米イラン関係が敵対状態にある現状では選択肢にできない。

 アフガニスタンの反対側の国境にはトルクメニスタンやウズベキスタン、タジキスタンといった旧ソ連から独立した諸国が並ぶが、これらはロシア政府の影響を多大に受けている。

 ロシアとNATOの関係は、8月のロシア軍によるグルジア侵攻で悪化したが、ドイツ軍は11月、ロシア政府から同国経由でアフガニスタンに軍事物資を補給する承認を取り付けた。(c)AFP/Thibauld Malterre