【11月30日 AFP】インド・ムンバイ(Mumbai)で26日夜に発生した同時襲撃事件で現場の一つとなったトライデント・ホテル(Trident Hotel)に宿泊していたカナダ人男性が29日、「怪しいドアノック」を無視したことで九死に一生を得たと米テレビCNNのインタビューで明かした。

 カナダ西岸バンクーバー(Vancouver)の自宅に無事帰宅したジョナサン・アーリック(Jonathan Ehrlich)さんは「時差ぼけのため、比較的早く眠りに就いた」と事件当日の体験を語り始めた。

 アーリックさんは「1時間くらい経ったころ、ドアをノックする音がしてインターホンが鳴った。こんな遅い時間にベッドメーキングなどに来るはずはないので一体誰だろうと不思議に思った。私はベッドに横になったまま返事をしなかった」と振り返った。

 すると「その5分ほど後に騒ぎが始まり、爆発音が聞こえた。テロリストは、まずフロントで宿泊客のパスポートのコピーを手に入れて西洋人を探していたと、数時間後、空港で知らされた。アーリックはアルファベットのEで始まる。おそらく私は彼らのリストの上位にいたことだろう。あの時ベッドから起き上がらなかったおかげで、わたしは今ここにいられる」とアーリックさんは語った。

 爆発音の直後、窓の外には煙が見えたという。緊張が高まり、「体内で弾ける」ほどのアドレナリンを感じたアーリックさんは、急いで衣服をカバンに詰め込むと全速力で18階からロビーに駆け下りた。ロビーでは誰かが「爆弾だ」と叫んでいた。

 ロビーは「床に血のりが残り、ガラスの破片が散乱していた」ためそのまま地下フロアに降りた。途中で出合った人には誰構わず「逃げろ」と叫んだ。

 ようやくホテルの外に脱出すると大勢の人がホテルを取り囲んでいた。ホテル従業員の1人がタクシーをつかまえてアーリックさんを車内に押し込み、そのまま空港に向かった。

 この夜アーリックさんが生死を分ける選択をしたのは2度目だった。アーリックさんは知人からロビーのバーで酒を飲まないかと誘われたが、翌朝乗る航空便のことを考えて誘いを断っていた。この友人はいったん人質となった後、屋根から脱出したが、この友人と一緒に酒を飲んでいた人物とは連絡が取れていないという。

 アーリックさんは、「はじめは自分のことを世界一幸運だと思ったが、世界一の幸運が2度も重なっていた」と難を逃れた喜びを語る一方、インドの人びとは「とても気の毒だ」と述べた。(c)AFP