【11月22日 AFP】(写真追加)アデン湾(Gulf of Aden)やアフリカ東海岸に出没する海賊の撃退法として、MP3プレーヤーに接続するだけで使える強力な音波装置の使用を英国の海賊対策企業が勧めている。

 紅海とインド洋を結ぶアデン湾や、アフリカ東海岸で運航する海運企業は、海賊の危険性に直面してきたが、今週サウジアラビアの大型タンカー「シリウス・ スター(Sirius Star)」が海賊に乗っ取られ、問題は改めて表面化した。

 しかし、MP3プレーヤーを音源に使用可能という長距離音響装置(Long Range Acoustic DeviceLRAD)と呼ばれる機器が、対抗策となりうるかもしれない。家庭用衛星受信アンテナ程度の大きさのこのLRADは、警告メッセージや雑音、サイレンなどの音波を、狙った狭い範囲のみに発し、襲撃者が近寄ろうとした場合には、耐えがたいほどの水準に音量を上げることができる。


 英国の対海賊警備企業Anti-Piracy Maritime Security SolutionAPMSS)は、危険水域を航行する商船などに対し、ハイテクを駆使したこの音波装置と軍所属経験がある3人1組の警備要員チームを派遣している。

 APMSSの最高経営責任者で英陸軍出身のニック・デービス(Nick Davis)氏(38)は「ひどい苦痛を与える(ので効果は絶大)。1000メートル程度離れた範囲まで有効で、100-200メートル以内で最大にされれば、ほとんど拷問だ。聴覚に障害が残る可能性もある」と話す。

 デービス氏によると、APMSSの警備チームと音響装置を乗せた商船は、13日にもイエメン沖で海賊の攻撃を撃退したという。この場合、3隻の小型ボートが船から9キロ程度にまで近づいた時点で、APMSSのチームが確認した。商船は全力で回避行動を取り、放水砲を準備するとともに近隣国の海軍などへ通報。そして、LRADをスタンバイした。

 ボートが3.6キロほどまで近付いたところで、LRADが警告音の発射を開始した。ボートは600メートル程度の地点で減速して400メートルまで近付き、ボート上の海賊たちはAK-47自動小銃を振り回し、威嚇(いかく)してきた。結局LRADの効果が海賊の勢いをそぎ、海賊は退散した。「彼らの攻撃は失敗に終わった。(LRADの性能を示せる)すばらしい遭遇だった」(デービス氏)

 もはや剣を手にして海賊を撃退する冒険劇のような時代は終わりを告げたようだ。(c)AFP/Robin Millard