【11月5日 AFP】米大統領選をバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員とともに戦う民主党の副大統領候補ジョー・バイデン(Joe Biden)上院議員(65)。選挙戦では労働者階級を味方に付け、オバマ氏当選の曉には豊富な外交知識でオバマ政治を支えると期待されるベテラン政治家だ。

「国内政治以上に外交に長けたバイデン氏を副大統領候補に選んだオバマ氏の選択は完ぺきだ」と絶賛するのは、メリーランド大学(University of Maryland)のポール・ハーンソン(Paul Herrnson)教授。

 反対に熟練政治家のバイデン氏に政治的知名度の低いサラ・ペイリン(Sarah Palin)アラスカ(Alaska)州知事をぶつけた共和党の大統領候補ジョン・マケイン(John McCain)上院議員の選択は「まずかった」と、同教授はいう。「ペイリン氏は外交知識に著しく欠けている」

 ニュージャージー(New Jersey)州ルトガーズ(Rutgers)大学のリチャード・ラングホーン(Richard Langhorne)教授は「世界各地を訪問してきたバイデン氏は、外交における米国の国益の重要性を理解しており、外交全般を賢明に処理できるだろう」との期待を示す。

 バイデン氏は、海外要人に幅広い人脈を築き、コソボ問題では故スロボダン・ミロシェビッチ(Slobodan Milosevic)大統領(当時)に直接、説得の電話をかけたほどだ。また、キューバのグアンタナモ(Guantanamo Bay)米軍基地のテロ容疑者収容施設の廃止を主張している。

 米ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のウィリアム・アンソリス(William Antholis)氏は、国際社会におけるさまざまな問題の解決には、米国と同盟各国との協調が重要なことをバイデン氏は十分に理解していると指摘する。特に、バイデン氏は同盟国の「目」が行き届かないイラク、イラン、ロシアとの外交問題に勢力的に取り組むだろうと、アンソリス氏はみる。

 バイデン氏は、20世紀前半に鉄鉱と炭鉱で栄えたペンシルベニア(Pennsylvania)州スクラントン(Scranton)のアイルランド系カトリックの労働者階級の家庭に生まれ育った。

 選挙戦での遊説でも、靴も買えないほど貧しかった少年時代にたびたび触れており、こうしたバイデン氏の背景が、オバマ氏の支持基盤には欠けていた白人労働者の民主党支持層を補完する。

 バイデン氏が上院議員に初当選したのは1972年、29歳の時だった。

 2度の脳動脈瘤(りゅう)で生死をさまよった経験や、1972年に当時の妻と幼い娘を交通事故で失うなど有権者の涙を誘う物語の持ち主でもある。

 バイデン氏が公の場で亡くなった妻と娘にふれることはあまりないが、たまに話が2人におよぶと、現在もつらい記憶に言葉を詰まらせる。

 また、バイデン氏の長男ボー・バイデン(Beau Biden)氏は、米陸軍州兵の一員として、副大統領候補の討論会の翌日にイラクに派遣されている。(c)AFP