【11月02日 AFP】独身のまま40代になる日本人人口が増えるなか、子どもに結婚してもらって平和な老後を暮らしたい親たちによって、「お見合い」ビジネスが息を吹き返している。

 都内ホテルの宴会場にはある日、自分の子どもの将来の伴侶を探そうと200人以上が集まった。多くは高齢の母親たちで、自分の息子や娘の写真や自己紹介書のコピーを最低10部は持参し、老眼鏡をかけて相手のプロフィールに目を通していた。

 近年、女性の社会的役割が増し、また親の介入なしに自分のパートナーは自分で選ぶ(または独身でいることを選ぶ)傾向が強まり、お見合いによる結婚は下火となる一方だった。若い人の多くが家庭よりもキャリア追求に目を向け、出生率の低下の一因ともなってきた。

 この日、83歳の女性は44歳の独身の息子の伴侶を探すチャンスが「たとえ1%でもあれば」と思って参加した。こうした親たちも多くは子どもに、まずは自分で伴侶を見つけて欲しいと思っている。

 しかし、孫を欲しいと思う親のなかには、子どもの年齢がネックとなることに気付き落胆して帰る人もいる。ある父親は、43歳の娘の写真を誰も手にとってくれなかったと意気消沈して会場を後にした。一方で、36歳の息子の妻となる女性の年齢は31歳まででなければ絶対にだめ、という母親もいた。

■結婚や家庭はリスクと思う女性の増加

 国立社会保障・人口問題研究所の2005年の統計によると、30代前半で独身なのは男性で47%、女性で32%だった。女性だけをみると、この数字は1990年の実に2倍。また18歳から39歳の単身者のうち約70%が親と同居していた。
 
 ベストセラー『「婚活」時代(Konkatsu-Jidai)』の共著者、白川桃子(Toko Shirakawa)氏は、日本人の結婚観は、人生に不可欠なものという考えから、個人の選択肢という考えに変化してきたという。

 白川氏によると、現在40歳前後の女性は「男性優位の社会と戦い、キャリアを持つことで女性の権利を主張した先駆けの世代」に属する。彼女たちはいわゆる適齢期を仕事づくめで過ごし、一方で社会にはキャリアと家庭生活の両立を保証する用意がなかったと指摘する。この世代の日本人の多くには、苦労して手に入れたライフスタイルを手放すことは何であれ避けたいという思いがあり、「結婚や家庭を築くことはリスク」ととらえられているという。

■成人の子どもへの干渉か、親として自然な行為か

 前述の親たちによるお見合いイベントは、札幌の結婚相談所「オフィスアン」の発案だ。過去8年間に開催した60回のイベントには、全国から延べ6500人以上の親たちが参加した。イベントを通じて子どもの伴侶を見つけた人は、全体の10%だ。

 主催者側の64歳の女性は、家族のいなかった知人の女性がガンで1人で亡くなったことをきっかけに、このサービスを始めようと思った。このイベントで「結婚しない子どもに対するお母さんたちの心配を少しでも和らげる」ことができればという。

 大人になった子どもの私生活を干渉することにならないか、と心配する親たちを説得することもよくあるという。「子どもを助けるのは親として自然なことと思えばいい。学校の入試や大学受験、就職と親はいつも子どもを助けてきた。愛する子どもが良い結婚をしたいと思っているのを助けることは間違いではない」

 しかし、子どもの側に結婚の価値を納得させる必要があるともいう。「周りが、特に親たちが、結婚の価値観を示すのが大事。人はお互いのサポートとケアで生きるべき。わたしは、『家族』がその答えだと思うのです」(c)AFP/Kanako Nakanishi