【10月22日 AFP】米大統領選の投票日の11月4日まで、残すところ2週間。しかし、選挙当日、米国民が直接、大統領候補に投票するのではないことは、海外ではあまり知られていない。大統領は「選挙人団(エレクトラルカレッジ、Electoral College)」方式と呼ばれる米国独特のシステムで選ばれる。

 この方式では、有権者は大統領選の投票日、各州ごとに指名されている選挙人に投票する。選挙人は、事前に共和党のジョン・マケイン(John McCain)候補と民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)候補のどちらに投票するかを誓約している人びとだ。

 各州で選出された選挙人は、12月15日にそれぞれの州都で、大統領選候補への投票を行う。ここで最も多くの票を獲得した候補が、次期大統領となる。

 選挙人は、全米50州とワシントンD.C.(コロンビア特別区)で、それぞれ人口に応じて割り当てられる。最も選挙人が多いのはカリフォルニア(California)州の55人で、次がテキサス(Texas)州の34人。最も少ない州では3人だ。

 異なる方式を用いるメーン(Maine)州とネブラスカ(Nebraska)州を除き、各州の勝者がその州の全選挙人票を獲得する勝者独り占め方式だ。

 大統領に選出されるためには、11月4日の選挙で、全米の選挙人合計538人の過半数を超える270人以上の選挙人を獲得する必要がある。両候補の獲得選挙人数が269人で並んだ場合は、下院で議員投票を行い、大統領を決定する。

■選挙人団方式の歴史と問題点

「選挙人団方式」の歴史は19世紀初頭までさかのぼる。広大な国土に人口が点在し、通信手段も未発達だった当時には、こうした方式が最も効率的かつ公正な選挙システムだったのだ。

 だが、この米国独自の複雑な選挙システムについて、「正直なところ、米国人の多くもよくわかっていない」と、非営利シンクタンク「Reform Institute」のコミュニケーション・ディレクター、クリス・ドライベルビス(Chris Dreibelbis)氏も認める。「われわれにとっては、常に選挙過程の一部だったが、国際的にみれば、確かに変わったやり方だろう」

「選挙人団方式」では国民の意志が反映されないとの批判もある。また、候補者の選挙活動も少数の激戦州に集中しがちだ。

 さらに 選挙人団方式では得票数では勝った候補が、選挙人の数が足りず大統領に手が届かないという事態も起こる。

 最近では、民主党のアル・ゴア(Al Gore)候補とジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)現大統領の接戦となった2000年の大統領選で、総票数ではブッシュ氏を上回っていたゴア氏がフロリダ(Florida)州を落としたため、同州の選挙人25人の票を獲得したブッシュ氏が選挙人の数でゴア氏を上回り、最終的に大統領の座についた。

 一方、「選挙人団方式」の支持者らは、直接選挙方式は都会の有権者に有利で、農村部や人口の少ない地域の利益を損ねると主張する。

 過去にも、何度か「選挙人団方式」の改正や撤廃を求める動議が提出されたことはあったが、選挙制度を改変するに足る支持は得られていない。(c)AFP