【10月22日 AFP】第二次大戦中、ナチスのホロコースト(ユダヤ人虐殺)に対し沈黙を守ったとしてユダヤ人団体から批判されている元ローマ法王、ピウス12世(Pius XII、在位:1939-58)の列福を承認するか否かについて、ローマ法王ベネディクト16世(Benedict XVI)が二の足を踏んでいる。承認すればユダヤ人との良好な関係を壊すことになりかねないからだ。

 ピウス12世の列聖を申請したピーター・ガンペル(Peter Gumpel)神父が、18日に伊ANSA通信に語ったところによると、列福の前段階である列福調査は5月8日には終了しているが、法王は「ユダヤ人との関係を考慮」してまだ手続き書類に署名をしていないという。

 法王庁は10月初め、「列福については、熟考するのが適当と思われる」との談話を発表しているが、判断がいつ頃になるかは明言を避けている。法王は同時期にピウス12世の没後50年を記念してローマで行われた宗教会議で、ピウス12世を擁護するとともに、近々列福したいとの意向も示したことから、出席したユダヤ教のラビ(宗教指導者)たちの反発を招いた。

■カトリック教会とユダヤ教会、深まる溝

 エルサレムのホロコースト記念館「ヤド・バシェム(Yad Vashem)」に展示されているピウス12世の顔写真には、「ピウス12世はホロコーストに抗議しなかった」と非難する内容のキャプションがついている。神父はこれについて「歴史の明らかな改ざんだ」と憤り、「法王はできる限り早期のイスラエル訪問を希望しているが、このキャプションが外されない限りは実現しないだろう」と語った。

 一方、法王庁は、このキャプションは、法王がイスラエル訪問を検討するか否かを決定する材料にはならないとの声明を出している。(c)AFP