【10月20日 AFP】(一部更新、写真追加)前国務長官で総合参謀本部議長も務めたコリン・パウエル(Colin Powell)氏が19日、米大統領選挙の民主党候補バラク・オバマ(Barack Obama)上院議員への支持を表明し、共和党候補ジョン・マケイン(John McCain)上院議員には強烈なひじ鉄を食らわせた。

 パウエル氏はNBCの番組「Meet the Press」で、マケイン氏と同氏の副大統領候補サラ・ペイリン(Sarah Palin)アラスカ(Alaska)州知事の2人の下で、共和党が右寄りに転向したことについて深い懸念を示した。

 また、オバマ氏の「人びとを鼓舞する能力、選挙戦の包括的な性質、国中のすべての人々に手をさしのべている点」について、米国を主導する「基準を満たしている」と評価。混血のオバマ氏が大統領になることは、アフリカ系米国人のみならずすべての米国人にとって「誇るべきこと」で、「世界を驚かすことになる」と語った。

 米統合参謀本議長としてイラク侵攻を推進する立場にあったパウエル氏がオバマ氏を支持したことは、マケイン氏への辛らつな批判になるとともに、態度を決めかねている有権者や退役軍人などに大きな影響を与えるものとみられている。

■9月の獲得選挙資金は過去最高に

 パウエル氏の支持表名に先立ち、オバマ氏陣営は9月に集めた選挙資金額を発表。過去最高だった8月の6600万ドル(約67億円)を大きく上回る1億5000万ドル(約150億円)以上になったことを明らかにした。

 オバマ氏陣営は、こうした巨額の選挙資金を使い、来月4日の大統領選挙本選を前に集中的な全国規模の広告キャンペーンを行うことが可能で、マケイン氏にとっては大きな打撃となるとみられている。オバマ氏は、19日に発表された米世論調査会社ギャラップ(Gallup)の調査でも、マケイン氏に10ポイントの差をつけている。

■マケイン氏、泰然自若ぶりを強調

 パウエル氏のオバマ氏支持表明についてマケイン氏は、ヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)氏やジェームズ・ベーカー(James Baker)氏など国務長官経験者からの支持を受けていることを強調。「彼(パウエル氏)は長年の友人だ。今回のことは別に驚くべきことではない」と述べた。

 一方で、オハイオ(Ohio)州トレド(Toredo)の選挙集会で、オバマ氏は雇用を喪失させ、ばらまき政策を取る社会主義者だと有権者らに警告。「パイを大きくすることより、一切れの分け前を誰に与えるかに腐心している」と批判した。

■選挙戦は「見苦しさ」を増す

 こうした中、ノースカロライナ(North Carolina)州を遊説中のオバマ氏が、フェイエットヴィル(Fayetteville)のバーベキューレストラン「Cape Fear」で店員のダイアン・ファニング(Diane Fanning)さん(54)から「社会主義者、社会主義者、社会主義者。ここから出て行け」と罵声を浴びせられる一幕があった。

 ノースカロライナ州では1976年を最後に大統領選で民主党候補が勝っていないが、現在は他の共和党寄りとされる州と同様、接戦州となっている。ファニングさんは、オバマ氏との握手も拒否し、報道陣に対しパウエル氏は「RINO(Republican In Name Only、名前だけの共和党員)」だと訴えた。

 一方、ほかの客らはオバマ氏に好意的な態度だった。家具販売員のマイク・ロング(Mike Long)さん(33)は、オバマ氏に投票するかどうかは五分五分だったが、オバマ氏と医療制度問題について意見を交換した後は「98%」オバマ氏に投票する気になったと話した。

 オバマ氏は、本選が近づくにつれて選挙戦は「おそらく見苦しいものになる」と指摘、「超えてはならない一線がある」として、自身は経済問題やイラク問題に焦点を合わせていく方針を強調した。(c)AFP