【10月3日 AFP】(一部更新、写真追加)米大統領選の副大統領候補、共和党のサラ・ペイリン(Sarah Palin)アラスカ(Alaska)州知事と民主党のジョー・バイデン(Joe Biden)上院議員は2日夜、ミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)で討論会に臨んだ。

 大統領候補の支持率で民主党のバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員が共和党のジョン・マケイン(John McCain)上院議員との差を広げる中、ペイリン氏が経験不足をめぐる懸念をいかに払しょくできるかに注目が集まったが、ペイリン氏は終始攻勢を保ち、重大な失言をすることなく切り抜けた。

■ペイリン氏: 質問に直接答えず経験不足をカバー

 ペイリン氏は「米中央政界のアウトサイダー」ぶりを発揮、質問に直接答えることはほとんどせず、歯切れのよい言葉と気取らない態度でオバマ氏の外交政策は「危険だ」などと批判した。

 国内外の重要課題に関する経験が不足しているとの懸念については、自身を庶民的な「(アイス)ホッケー・ママ」と表現し、子どもをサッカーに連れて行く典型的な中流層の一員だと位置づけることで、大統領選で重要視されている中流層や女性層との結びつきを強調した。一方で、小さな町の市長やアラスカ州知事を歴任した改革者で、エネルギー専門家だと自身の功績を誇示した。

「あなたが聞きたがっている質問には答えていないかもしれない。でも、わたしは米国の人びとに直接語りかけているつもりだ。人びとにわたしの実績も知ってもらいたいのだ」(ペイリン氏)

■バイデン氏: 35年の経験を強調

 対するバイデン氏は、35年にわたる議員経験を武器に、政策の詳細にも踏み込んで質問に答え、経済、外交、安全保障などの幅広い分野で専門的な知識を印象づけた。

 女性差別や弱い者いじめとの印象を与えることを避けるため、ペイリン氏の経験不足を直接攻撃することはなかったが、マケイン氏に対しては不人気なジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領のクローンだとして強く批判した。

■国内問題は互角、外交・安保に差

 討論会は、ペイリン氏がバイデン氏に「ジョーと呼んでもいい?」と声をかけて始まった。

 最初の質問は金融危機と、経済問題が米中間層に及ぼす影響についてで、両副大統領候補は、金融危機の原因と対策に関して大きく異なる意見を示した。

 ペイリン氏が民主党の所得分配政策や高税率政策を批判したのに対し、バイデン氏は8年に及ぶ共和党政権が経済の混乱の元凶だと反論。金融危機が表面化した9月半ばに「マケイン氏は朝9時に『米国の経済は堅調』と述べておきながら、夜になって米国は金融危機にあると口にした。実態を把握していない証拠だ」と批判した。

 ペイリン氏はこの批判に直接反論はせず、オバマ氏が上院で増税案に94回賛成したことを指摘した。

 国内政策では強みを見せたペイリン氏だが、質問が安全保障問題やブッシュ政権の外交政策に及ぶと、経験の差は歴然だった。

 ペイリン氏はアフガニスタンで北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安維持部隊を率いる米中央軍のデービッド・マキャナン(David McKiernan)司令官を「マクレラン(McClellan)と呼んだほか、幾つかの質問の答えはあいまいで具体性を欠いた。(c)AFP/Michael Mathes