【10月4日 AFP】オーストラリア人は、牛肉や羊肉ではなくカンガルーの肉を食べるべき。一見風変わりのこうした主張が、気候変動問題の政府顧問から科学的なお墨付きを与えられることになった。

 政府顧問のロス・ガーナー(Ross Garnaut)教授は、1日に政府に提出した地球温暖化に関する報告書の中で、国内に数百万頭いる家畜がげっぷやおならで排出するメタンガスは、同国の農業が排出する全温室効果ガスの67%を占めると指摘。一方のカンガルーはメタンガスをほとんど排出しないとしている。

 また、農業でも温室効果ガス排出権が必要とされる場合、肉の価格は上昇し、食習慣に変化が起こるだろうとしている。

 ガーナー教授は、「オーストラリアには、約6万年にわたりカンガルーが食べられてきたという歴史がある。カンガルー肉が再び見直されるかもしれない」とした上で、カンガルー肉の復権には家畜や農場の管理、消費者の抵抗、味の変化といった「障壁」があると指摘した。

 教授は、カンガルー肉の生産量が将来的には牛肉と羊肉を抜き、費用効率も高くなることを示したある研究を引き合いに出した。研究は、2020年までにウシは700万頭、ヒツジは3600万頭それぞれ減少し、カンガルーは2020年までに現在の3400万頭から2億4000万頭に増えるとしている。さらに、温室効果ガス排出権が高値になるにつれて、カンガルー肉は牛肉、羊肉よりももうけが大きくなるという。

 カンガルーは国のシンボルであり、紋章にもかたどられているが、毎年数百万頭のカンガルーが間引きされ、その肉はペットフードなどに加工されている。

 食肉用のカンガルー牧場を作るという考えは物議を醸しそうだが、ヘルシーフードを好む人々には既に食されている。ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)環境研究所のピーター・アンプト(Peter Ampt)氏は、「カンガルー肉は高タンパクで脂肪分が少ない。基本的に放し飼いで、自然界の餌を食べているので、とても安全だ」と説明している。(c)AFP